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【「科学的」はどこまで本当?】BRAIN DRIVEN / 青砥瑞人著 正直な書評・感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」
本書「BRAIN DRIVEN」のコンセプトは
この3つをコントロールする方法を神経科学の観点から解き明かす、というもの。
正直な感想をまとめました。

<注意>記事の後半、辛口注意。

本作はKindle Unlimited 対象書籍です。

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BRAIN DRIVENの概要

「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」
この3つをコントロールする方法を神経科学の観点から科学的に解き明かす。

という内容です。

BRAIN DRIVENの感想・評価

よかった点、いまいちな点にわけて、評価しました。

よかった点「メタ認知」がためになる

本書内にたびたび登場するキーワードが「メタ認知」。

メタ認知は、「自分自身を、客観視、俯瞰視」した認知の状態である。
CHAPTER1 モチベーション より

  • モチベーションが高まっているとき。
  • ストレスを抱えているとき。

そんな時に自分自身を客観的に眺め、

  • 「なぜモチベーションが高まっているのか」
  • 「なぜストレスを感じているのか」

原因を探ることで、自分の考え方のクセを知る。
考え方のクセを知れば、「モチベーションを上げ」「適度なストレスを保つ」といった自分自身のコントロールを可能にする。
この「メタ認知」の考え方が本書には何度も登場します。

自分を客観視するって、簡単なようで、なかなかできないなあと、本書を読んで実感。

これからは、自分の感情の動きと原因を客観視=メタ認知したい!と決意させられました。

OECDもメタ認知能力を重要視している?

最近は、OECDもメタ認知能力が21世紀において必要な能力として非常に重要だと言っている。 CHAPTER1 モチベーションより

※OECD 経済開発協力機構

わんこたんにて検索したところ、OECDの資料 「SKILLS FOR 2030」の7ページ目に以下の記載を発見!

https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/skills/Skills_for_2030_concept_note.pdf

Metacognition, lifelong learning and understanding other cultures are needed to adapt to a changing environment

(訳)

メタ認知、生涯学習、他文化に対する理解は、環境変化に適応するために必要

なお同文ではメタ認知のことを「skills of thinking about thinking]
=考えることを考えるスキルと紹介しています。

わかるようなわからないような

ただ考えるだけではなく「なぜそのように考えたのか」まで思考するのが重要!
と、わんこたんは理解しました。

いまいちな点 本文の内容が論文から飛躍しすぎている

本書は「科学的根拠」をウリに、さまざまな論文を引用しています。

残念ながら「元の論文から内容が飛躍しすぎているのでは?」と感じる箇所ありました。

①空腹によってモチベーションを高める、は本当か?

例えば、

Chapter 1 motivationの以下記載。

①脳内のドパミンという物質を増やすと記憶定着が高まる、という研究がある

②ドパミンは空腹時に大量に作られる、と「推定される」

③空腹によってモチベーションを高められる

(※わんこたんにて一部要約しています

まず①について、以下の論文(A)を引用しています。

States of curiosity modulate hippocampus-dependent learning via the dopaminergic circuit - PMC

論文(A)では

「興味を引く雑学問題」などを使うと「学習の動機付け(モチベーション)」となり「記憶定着」がよくなる。

その原因が「海馬でのドパミンの働きが高まったためでは」と考察しています。

その後②「ドパミンが空腹時に作られる」と筆者の青砥氏は推定していますが、これについて根拠となる論文は特に引用されていません。

根拠があるなら論文を。ないなら「筆者の推測」であることを明記しないとフェアじゃないよね。

以下の論文(わんこたんにて検索)で「短期間の」絶食でドパミンが増加するようだ、というマウスの実験はあリましたが、これで論文(A)と同じ結果が得られる、と断言するのは難しそう。

Acute fasting increases somatodendritic dopamine release in the ventral tegmental area - PMC

「③空腹によってモチベーションを高められる」という本書の主張は

論文(A)の考察に「ドパミンが空腹時に大量に作られる」という推論をトッピングすることでうまれた、「科学的っぽくまとめられたナニカ(=ただの筆者のアイデア)」のように思えます。

(実際に、本書でも「可能性がある」といいつつ断言はしていないんだけどね)

わんこたん自身、「空腹時だとなんか仕事に集中できる!はかどる!」という経験があるので、科学的に解明されてはいないけど、もしかすると、「空腹でモチベーションアップ!」は、本当は正しいのかもしれない。

ただし、それを「科学的に正しい!すごいでしょ!」と主張していいかは別問題。

本書の内容を「科学的に正しいと信じ込む」のではなく「自分で試してみて、よさそうだったら取り入れる」くらいのかるーい気持ちで、理解していくのはアリかなあと思いました。 

それなら「BRAIN DRIVEN」ではなく他の心理学の書籍を読めばいいやん

この本に限らず、
論文を引用しているからと内容を鵜呑みにするのではなく、論文も含めて内容を検証することが必要じゃ

②元の論文の「訳」が適切でない箇所がある。

「BRAIN DRIVEN」CHAPTER1 図06では

「ドーパミンとノルアドレナリンの役割」と題して下記の論文(B)の図を引用しています。

Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function

Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function figure2

図は上段aがノルアドレナリン、bがドーパミンで、両者の量が最適(=図の真ん中部分)だと、PFC(前頭前野)の生理・認知機能が最適な状態になる(逆U字型の頂点部分)ことを表しています。

この図をもとに、本書では以下のように主張。

ドーパミンとノルアドレナリンの量が過小でも過剰でも、我々の行動や認知性が最適化されないことが見て取れる(BRAIN DRIVENより引用)

論文(B)はサルを用いた実験ですが、ちょうどよい量のドーパミンとノルアドレナリンによって。最適な行動・認知が得られる、と主張は正しそう。

しかし

ドーパミンは数多くある情報から意図しない(Non-Preferred)情報を減らすことで 認知性を高めていることがわかる。一方で、ノルアドレナリンは意図した情報( Preferred)も意図しない情報も(Non-Preferred)含めて、あらゆる情報に対して認知 性を高めていることがわかる。(BRAIN DRIVENより引用)

うーーん

実は論文(B)の実験「サルを椅子に固定し、正しい方向に眼球を向けるとご褒美のジュースが口に滴下される」というもの。

https://journals.physiology.org/doi/epdf/10.1152/jn.1989.61.2.331

「BRAIN DRIVEN」では、

原文のNon-Preferredを「意図しない」

Preferredを「意図する」と訳しています。

しかし実際の論文では、

Preferred=ジュースがもらえる方向への脳の空間認識

Non-Preferred=無関係な方向への認識を

と表現しているので、これを「ドーパミンとノルアドレナリンがちょうどよい量なら、意図しない余計な情報を減らして認知を高められる!」と紹介してしまうのは、ちょっと盛り過ぎでは

したがって、モチベーションを高めて何かに集中したり、パフォーマンスを最大化したりするには、「ノルアドレナリン」の作用と「ドーパミンの作用」のどちらも必要になる。(BRAIN DRIVENより引用)

「行動や認知をつかさどる前頭前野のはたらきが最適化される」という表現ならよかったでしょう。

しかし「モチベーションを高めてパフォーマンスを最大化」まで言い切るのは明らかに過剰表現。

読者の興味をひくために過剰な表現になるのはいただけない

③科学的根拠のない「体験談」と見分けにくい

CHAPTER2  STRESSでは、ネガティブな感情をポジティブに書き換える方法を紹介しています。

例えば「信頼できる人に辛い体験を話し、すっきりする」という感覚を「感情の書き換え」としているが、これについては特に引用論文もなく「体験談レベル」という記載でした。

また、同チャプターで「ストレスとうまく付き合うための15のヒント」というものを紹介しているが、こちらも引用している論文は1、2個程度。

このように「引用論文」を用いて科学的根拠(らしきもの)を示している箇所と、特に何も引用せず「体験談ベース」で論じている部分が入り混じっており、どこまでが「科学的なのか?」わかりづらいです。

④瞳孔の収縮→リラックス??

「BRAIN DRIVEN」CHAPTER 2 STRESS ではリラックス・休息中に優位になる「副交感神経」について説明。

その中で

副交感神経が優位になると「瞳孔が収縮する」

だから「眩しい環境で瞳孔を収縮させる(例えば朝日や夕日を見る)と副交感神経が優位になってストレスを軽減できる!」

という記載が。

まぶしい環境になっても、瞳孔の副交感神経系(M3受容体)が作動するだけで、リラックスには関係しないと思うけど。

医学的にもいまいちな内容だな、とガクッとしました。

まとめ 

考え方として参考になる点はある。

ただし「科学的根拠」がウリの本なのに、「科学的根拠」に欠ける箇所が多い。

であれば、あえて小難しい「BRAIN DRIVEN」を読む必要はなく、他の読みやすい心理学の本を読んだ方が良いです。

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