就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
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価格:693円 |
数年前にも読んだことがあるのですが、
続編である「何様」を買ったので、本作も一度読み返した次第です。
今から10年ほど前の作品ですが、色あせない魅力があります。
というか、ほとんど古さを感じない。
現在の就活を知る若者から見たら、また違った印象を受けるのかな?
友人には言えない本音を、ブラウザの検索履歴やSNS(裏アカ)の書き込みに
託す登場人物たち。
内容には関係ないですが、文庫版よりも
単行本版の表紙のほうが好きだったなあ。
kindleの方は、文庫化にともなって表紙がかわってしまったようで、
ちょっと残念w
文庫版のほうは、より「就活」感がでていますね。
単行本版の表紙のイラストレーターさんのリンクを貼ったので、ぜひ見比べて~
以下ネタバレを含みます。
ここがクライマックス!というところで読者に明かされる
主人公の秘密。
この主人公の「秘密」について、すっかり忘れていたので、
読むのは2回目なのにめちゃくちゃ驚きました笑
ラストシーンの「理香」のセリフはちょっとねちっこいというか、
そこまでいうかふつう!?という感じもありますが、
ここまでためてきたフラストレーションがいっきに爆発するシーンであり
爽快感(闇)すら感じます。
瑞月さんのしんどさ
就職して〇年経過した今になって読み返すと、登場人物5人の中で、
瑞月さんの「しんどさ」が際立ちます。
瑞月さんの就活は一見すると登場人物の中で一番順調です。
一番最初に内定を得て、早々に就活を終えます。
しかし、瑞月さんは家庭の事情で「ちゃんと」就職しなければならない。
(と、本人は感じている)
自ずと職場の選択肢は限られ、自分の人生を好きなように生きられない。
もちろん、一般的に、
家庭をもったり、就職したり、金銭的なことだったり、様々な事情で
人生の選択肢は狭まるものですが、瑞月さんについては、
「選択肢の狭まり」が他登場人物よりも早く訪れてしまったように思えます。
拓人や理香や隆良は物語の中では「かっこわるい」存在として
描かれていますが、人生における選択肢はみな、
瑞月さんよりずっと広くて自由で、恵まれているように感じました。
というわけで、復習もできたし感想も書いたし、
気持ちも新たに、続編「何様」を読みたいと思います!