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きっと人生が好きになる 君のクイズ 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 

早押しクイズ。賞金1000万円のかかったそのファイナルで、対戦相手が問題文を1文字も聴かずに正答!?
これはやらせか、それとも真実か。
前代未聞のクイズミステリー、開幕! 君のクイズの感想を書きました。
 
君のクイズ
君のクイズ
 

 

君のクイズ あらすじ

早押しクイズQ -1グランプリの決勝。どちらの解答者もあと1問の正解で優勝、そのタイミングで、僕の対戦相手、本庄絆は、問題文の読み上げ前にボタンを押し、正答し、優勝を手にする。

これはやらせではないのか?釈然としない僕は、不可解な正答の謎を解くべく、本庄絆について調べ始めるが……。

 

クイズという名の「不可能犯罪」の謎を解く、一気読み必至のクイズミステリー!

 

 

著者 小川哲さんについて

SF、ミステリージャンルで高い評価を受けている小川さん。ユートロニカのこちら側でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。2023年には地図と拳で直木賞を受賞しました。

ジャンル越境的(※)とも評されるその作風からは、SF、ミステリーという枠に縛られない軽やかさを感じます。管理人わんこたんが今とっても気になっている作家さん!

嘘と正典 鷲羽巧さんの解説より

 

以下に小川哲さんの作品を並べました ※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ。

ユートロニカのこちら側
ゲームの王国 上
ゲームの王国 下
地図と拳
嘘と正典
君が手にするはずだった黄金について

 

嘘と正典 紹介記事はこちら

過去に答えを探し求め、あるいは過去に囚われ、あるいは過去に立ち向かう人々を描いた、SF風味の短編集!

▶︎嘘と正典 感想と解説 - わんこたんと栞の森

 

 

嘘と正典
嘘と正典
 

 

君のクイズ 感想

クイズの謎を解いているようで、実は人生という名のミステリーを解いていたとは。

問題文が一文字も読まれない中で正答する「不可能犯罪」のトリックが鮮やかに解かれていく、素晴らしいミステリーでした。

 

CAUTION!

以下、君のクイズの内容に触れる箇所があります。未読の方はご注意を!

 

クイズプレーヤーならではの思考が楽しい

クイズプレーヤーである主人公は、ついつい思考がクイズに。そんなクイズプレーヤーあるある(?)な脳内描写が楽しい!

思考して、クイズを解いて、また思考。

でも、解答の背景には人生での経験が積み重なっていて……そんな構造が次第に明かされていきます。

 

兄との思い出、別れた彼女、出張先の朝食ビュッフェ。

そんな人生の瞬間がクイズを解く武器になっていた、というのが面白いし、同時に僕と、対戦相手の本庄絆の強さの裏付けにもなっていく、というのがすごくいい。

日常のちょっとしたことが,光り輝くクイズのひとかけらになるような、そんな美しさすら感じました。

 

クイズプレーヤーならではの戦略、豆知識も楽しい

確定ポイントという概念も面白いし、確定ポイントを押さえた上での読ませ押し、と言った戦略の開示も面白い。

こういう豆知識が楽しい小説って、やっぱり名作だよなあ〜と思うなど。

問題文が読み上げられることで、無限大の正当の選択肢が狭められ、確定ポイントで1つに収束する、というのはなんだかSF的で、好きな書き方。

 

人生のエピソードが解答につながっている、という演出

人生の一場面が正答につながる、という物語の構造について、映画スラムドッグ$ミリオネアを思い起こす方も多いかも。

 

スラムドッグ$ミリオネアのあらすじ

インド・ムンバイのスラム街出身で無学の青年ジャマールは、TV番組「クイズ$ミリオネア」で最終問題までたどり着き、一夜にして億万長者となるチャンスをつかむが、不正を疑われてしまいます。

なぜ彼は問題を解くことができたのか?そのヒントは彼の半生の中にあって……

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▶Prime Videoでの視聴はこちら

 

一方で、君のクイズでは、そこに出題者側の思惑も重なり、謎解きを奥深くしている点に注目。

生放送のクイズ番組を確実に盛り上げる、演出の虚構も相まって、スラムドッグ$ミリオネアとはまた一味違った奥深さを味わえました。

 

出題者側の思惑について、序盤に伏線があった

君のクイズ 冒頭に登場する以下の描写。主人公がファイナルの様子について振り返るシーンです。

 

Q -1グランプリのファイナル。その日の僕はクイズ人生でも最高に調子が良かった。

 

これが、まさか伏線だったとは、こんな序盤からすでに布石が貼られていたのですね。そして主人公に先んじて◯◯の思惑に気づいていたのが、対戦相手の本庄絆でした。

 

このクイズ、ヤラセか?魔法か?

本庄の回答はヤラセだったのか、それとも魔法だったのか。

これは冒頭、僕のクイズ仲間の富塚さんの発言。同作者の嘘と正典に収録されている「魔術師」の、マジックなのか?本物のタイムトラベルなのか?を彷彿とさせる展開です。

 

 

嘘と正典
嘘と正典
 

噓と正典 紹介記事はこちら▶嘘と正典 感想と解説 - わんこたんと栞の森

 

これは魔法なのか?現実なのか?という流れで読者の興味を惹きつけるのが本当にうまい。

クイズプレーヤーの高度な技術は、一見魔法にしか見えない。

その魔法を丁寧に紐解く本作。プロフェッショナルへのリスペクトを感じるし、クイズ番組に出場するプレーヤーたちを、応援したくなります。

 

君のクイズ 結末での本庄絆とのやりとりについて

君のクイズは決してハッピーエンドではありません。本庄絆の選択に、人によっては失望するかも。

 

本庄と◯◯は、ある種いいコンビだったのですよね。

◯◯はクイズ番組を盛り上げるためなら、なんでもやる。本庄も◯◯から求められた役割を完璧にこなしていく。けれど、最後に本庄は◯◯を切り捨てます。

自分を舞台装置としてしか見ていない◯◯から離れ、自分の力で未来を切り開いていこうとする姿は痛快だし、わんこたんは本庄のことを嫌いにはなれませんでした。主人公の僕も同じ気持ちを抱いたのかも。たぶん。

 

みんながみんな、「クイズの成功」のためにまっすぐなんですよね。主人公も、対戦相手の本庄絆も、〇〇も。結末はほろ苦いかもしれないけど、前を向いて頑張りたくなる。そんな不思議な爽快感を感じました。

 

君のクイズ の次に読みたい おすすめ作品

ふとした瞬間が謎解きになる。変わらぬ日々が、非日常に変わる。日常/非日常の謎をテーマにした作品を、わんこたんの独断と偏見で選んでみました。

 

彼女との出会いが「灰色」を変える

アニメ化で話題となった本作品ですが、原作版もおすすめ!

省エネ高校生・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間とともに、学校に潜む謎を解き明かします。

そんな中、折木の灰色の日常も、少しずつ変化して……?

 

氷菓 「古典部」シリーズ
氷菓 「古典部」シリーズ
 

 

感想記事はこちら▶︎氷菓 青春×ミステリーな原作小説はやっぱりおもしろい - わんこたんと栞の森

 

読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

 

君のクイズ
君のクイズ