人間はつらい。仕事、人間関係、やりたいことをやりたいように
できない不自由さ。(一生ゲームやってたいけどそうもいかない)
なんとなくある将来への不安感(具体的なものも、そうでないものも)
かくいう自分も、最近、将来のためのスキルとか経験値を考えて
「この仕事やります!」と手を挙げたものの、
仕事が増える=しんどい
になわけで(そりゃそうだ)
早くも手を挙げたことを後悔したり。
なんなんでしょうね、人間。
人間やめて動物、ヤギなんかになったら
人生ゆるっと過ごせるんじゃないんですかね。
と、そこで本当にヤギになってやる!と一念発起した男の話が
本書となります。
実際にヤギになってみた描写は少なめ(最後の方でちょっぴり)で、
ヤギになろうとする過程に重きを置いた構成となっています。
筆者は様々なところから協力(+若干の生暖かい視線)を得て
いろいろ試行錯誤するわけですが、
、、、実際のところなかなかヤギには近づけません。
ヤギ(草食動物)のような視界(360度後ろの方まで見えるやつ)
ヤギと同じ思考を得る(ヤギは人間のように悩んだりしないらしい)
ヤギのように胃袋を増設して草からエネルギーを取り出す
ヤギのようにぴょんぴょん岩場をかけまわる
筆者がこれらに正面から挑み、
(そして挫折したり妥協したりする)過程が
丹念に、描かれていきます。
そもそも、これで2016年のイグ・ノーベル賞(生物学賞)を受賞しているので
科学的にはめちゃくちゃ「ガチ」です。
ヤギの体はヤギが生きるために最適にできている。
その当たり前の事実が、無情にも筆者を襲います。笑える。
日本語訳もかなりユルめに振り切っていて、作者のユーモアをできるだけ
再現しようとしているなと感じます。
少なくとも本書を読んでいる間は人間をお休みできますので、
人間をやめたいみなさまには必読の一冊です。
おしまい
2点だけ、気になった点を
「脳の大きさ」の進化に関する記述について、
本書では「凶暴なオスを集団から排除することで、
集団の脳が縮小する方向に進化が進んだ」といったニュアンスで
書かれていますが、
以前読んだこちらの本↓の意見とは異なるように思えました。
私は専門家ではないので、どっちが正しいかは知りませんが、
念のため。
また、「ヤギと人間が500万年前に進化の系統から分岐した」という
記載もありましたが、ここは明らかにもっと古い年代かなと思います。