
この世のものとは思えない異空間で、将棋っぽいルールで、異形のモンスター駒を繰って戦う。こんな設定、聞くだけでワクワクしちゃいませんか?しちゃいますよね?
異空間ゲームを通じて、徐々に明らかになる真実とは?ダークゾーン/貴志祐介 の感想を書きました。
ダークゾーン あらすじ
闇の中で目覚めた塚田。そこは自身と、そして友人・知人・恋人が<赤>の異形の駒となって戦うステージだった。
対峙する<青>との凄惨な戦い。まるで将棋のような、それでいて将棋とは全く異なる戦い。その中で、塚田は徐々に真相に近づいていく。
- 著者:貴志 祐介 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:KADOKAWA 2017/12/25
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 貴志 祐介 先生について
1996年に 十三番目の人格 ISOLA で作家デビュー。
日本のホラー小説界を代表する貴志先生ですが。ホラーのみならず人間ドラマ、ミステリーそしてSFと幅広く作品を展開。その面白さゆえに映像化された作品も多数。
特に有名かつ人気なのは、やはり アニメ化もされたSF大作 新世界より でしょうか。個人的にはデスゲーム小説の草分け的存在である、クリムゾンの迷宮 も捨てがたい!
以下に代表作を集めてみました。※書影クリックでAmazonのページにジャンプ
ダークゾーン 感想
ぐ、ぐぐぐ。
なんだろう、おもしろさはある。なのになぜか煮え切らない。
傑作になりそうな予感はあれど、失速してしまう、そんな惜しい作品でした。
同じサバイバルゲームもの、クリムゾンの迷宮のようなハラハラ感とワクワク感を期待していたのですが……
ゲーム回数が多い
ほんと、これ。
目次を見ていただけたらわかるように、同じルールのゲームで8回も勝負するんです。しかも同じ相手と。そして1回ごとの勝負が長い。
これが、毎回違う相手だったら、あるいは試合回数が少なければ、もう少し緊張感が持続した……のだろうか。
ルールがあやふや
将棋っぽいルールがありながら、ゲームのルールが微妙にあやふや。
ルールを教えてくれるキャラ<一つ眼>が意地悪で後出しでどんどんルールが提示されるのは、まあ目をつぶるとしましょう。そう言う理不尽さも含めて「ダークゾーン」なのだから。
ただ特に気になったのは以下の点
- 同一セル中に同時に2駒は入れない
→じゃあ<王将>(主人公 塚田)が<死の手>(ヒロイン 井口 理沙)にキスしてたのはなんなんだ。ピョーンと弾かれないのか。そういうとこだぞ。 - なんか倒されるまでにタイムラグがある。
例えば<死の手>は即死効果を持つのに、<青銅人>に触っても、すぐには死なない。なんなら死の間際に暴れて他の駒を巻き込んでいる。
他にも死ぬ間際に暴れて相手を道連れ、ていうシーンが頻出するんですよね。この辺り、妙にランダム要素があって受け入れづらかったです。
将棋みたく、敵と同一セルに入り込んだ時点で入り込まれた側は死ぬだったらわかりやすかったのに。
ステージ、複雑!
ステージは、あの軍艦島。
正式名称は端島(はしま)。かつて日本の炭鉱産業を支えた、巨大炭鉱島です。2015年にはユネスコの世界文化遺産に。
軍艦島には校舎や高層住宅など、設備が密集しているので、確かにサバイバルゲームにはおあつらえ向きの舞台ですが、あまりに構造が複雑で、「将棋風戦略ゲーム」の舞台として、本当に適切だったのだろうか……
しかも舞台設定を端島にする理由が薄いんですよね。もちろん、ヒロインである井口理沙の出身であり、そして主人公 塚田裕史の過去に密接に関わる場所ではある。
だがその場所を軍艦島とする必要性が薄かったなと。
天才キャラ不在で、試合がなかなか動かない
主人公 塚田裕史は将棋の奨励会三段。三段って、将棋の腕前としてはかなりのものだと思います。四段への門が狭いだけで。
が、戦わされるのは「将棋っぽいけど将棋じゃない」ゲーム。その結果、戦略に悩み、動けないまま数時間経過、みたい展開もザラ。
敵も味方もいわゆる「天才キャラ」不在なので、ずっと悩んでるんですよね。それが読みながらどうにもストレスになてしまった。
でした。しかも主人公陣営の<歩兵>(根本 毅:塚田のゼミの指導教官)が、また余計な入れ知恵をしてくるもんだから笑
以下より、ダークゾーンの終盤の展開に触れています。未読の方はご注意ください。
でも結末まで読んでみると、塚田は将棋でもそれ以外でも、ずっとそういうキャラなんですよね。棋士としての能力はある。でも悩み、切り替えられない、そして他責思考。悪い意味で一貫した性格です。
そう考えると、主人公の思考の傾向が、ゲーム内容とその展開によく反映されていたなと。
多分塚田は現実世界でも、指導教官の根本のことを、内心では「余計なアドバイスうざい」と思っていたのかも。そう考えると、ゲーム内の根本先生には、その「塚田の感じていた、うざさ」が投影されていたのかもしれませんね。
<青>の敵将の奥本博樹も、ゲーム内だと冷酷で薄情で自信家なんですが、それも塚田が認識している、一面的な「奥本ってこんなやつ」が戯画化されて登場していたんだろうなあ。
主人公が最後までクズで良かった
で、この作品の主人公の塚田がクズの中のクズなんですよ。最後までクズのまま突き進んでくれたのは、大変よかったです。
ちょっとでも主人公に同情させようとしたり、主人公が改心して中途半端に救われたりすることもない。清々しいほどに。
だから、ラストはある意味安心して読むことができました。
結局、ゲームが中途半端な出来ばえなのは、このクズ主人公の想像の限界ゆえなのかもしれません。ぐだぐだで、詰めが甘くて、どこか他責思考で、陰湿。
そういう主人公が脳内に作ったゲームとキャラクターだからね。しょうがないしょうがない。
将棋 奨励会の三段リーグという魔境
ダークゾーンでは三段からプロ棋士の仲間入りとなる四段への昇段は本当に狭き門で、26歳という退会の期限が重くのしかかる様子が、何度も描写されます。
以下にnoteで、その熾烈さが伝わってきます。この方は高校に進学せず、ひたすら腕を磨くのですが、次第に心が壊れていく様子が克明に描かれます。将棋界すごい。
熾烈を極める奨励会三段リーグ プロ棋士昇段の一番の将棋を二度逃す 心が壊れていくとき【第7話】|佐藤佳一郎/ことり塾/プログラミングと将棋が学べる/福島県伊達市保原町
その壊れた心から生まれた怪物。それこそ貴志祐介先生が ダークゾーン で書きたかったものなんだろうなあと。
次に読みたい おすすめ貴志祐介作品
わんこたん、貴志祐介作品大好きなのに、ダークゾーンの感想では批判ばっかりになってしまってごめんなさい。
貴志祐介作品、こんなに面白いのもあるんだ!読んでみてほしい!
クリムゾンの迷宮 /貴志 祐介
深紅の岩山で目覚めた主人公たち。そばのゲーム機には、「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」というメッセージ。それは、血で血を洗う凄惨なサバイバルゲームのはじまりで……
デスゲーム小説の元祖であり、傑作ホラー小説です。読み始めたらとまらない!
新世界より /貴志祐介
■■年の日本。神栖66町の集落。現代社会より、かなり質素ではあるものの、人々はごく普通の平和的な生活を送っていました。 皆、呪力を使えること、変な生き物を使役していること、そして、時々こどもが消えることを除いては。
徐々に明らかになる世界の真実に読む手がとまらない、傑作長編SFです。
感想記事はこちら▶︎【感想と考察】貴志祐介「新世界より」小説版 - わんこたんと栞の森
おすすめ作品、他にもいろいろ!
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