
たった11語の文章から、事件を解決する。
ニッキイ・ウェルト教授の推理が冴えわたる短編集、九マイルは遠すぎる の感想を書きました。
九マイルは遠すぎる あらすじ
ふとした一言だけを頼りに、推論を展開し、殺人事件の真相を暴く!
わずかな手がかりから推理だけで難事件を解決していくニッキイの活躍を収録した短篇集です。
- 著者:ハリイ・ケメルマン → Amazonの著作一覧はこちら
- 翻訳:永井 淳、深町 眞理子 (翻訳)
- 発売:早川書房 1976/07/30
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 ハリイ・ケメルマン氏について
アメリカのミステリー作家である氏は、1947年から1967年にかけて、ニッキイ・ウェルト英文学教授を探偵役にした短編を執筆。それを収録したのが、当記事で紹介している九マイルは遠すぎる です。
このほか、ユダヤ教のラビを主人公とした 金曜日ラビは寝坊したから始まるラビ・シリーズでも有名。でも現在はどれも絶版で中古のみ流通みたいで、残念。
以下に著書の一部を並べました。(※書影クリックでAmazonのページへ)
九マイルは遠すぎる 感想
主要登場人物は以下の2人
- 法学部教授をやめて検事となった「わたし」※ワトソン役
- 英文学教授のニッキィ(ニコラス)・ウェルト
探偵役のニッキイが、わずかな情報だけで推理を組み立てる、オーソドックスな安楽椅子探偵スタイル。
警察の地道な捜査をひらめきでひっくり返す爽快感!短い中に、本格ミステリーのエッセンスがギュッと詰まっています。
令和の時代に読むと、レトロな時代背景も相まって、さらに味わい深し。
九マイルは遠すぎる
表題作。1947年発表。
”A nine mile walk is no joke, especially in the rain”
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」
「わたし」の何気ない言葉から、ニッキィの推理が冴えわたる。たった16ページの作品ですが、わずかな言葉で真実を見抜くシンプルさがたまりません。
……こんなに都合よく推理がハマるはずないだろ!というツッコミは野暮です笑 こういうのが良いのよ。
わらの男
1950年発表。
検事である「わたし」は同業者の集まりでニッキイの「九マイル」のエピソードを紹介しますが、ジョンストン検事に、捜査は直感ではなく地道な捜査が重要だと諭されます。
ジョンストンはその根拠として、とある誘拐事件の脅迫状のコピーを取り出しますが、そこにニッキイがやってきて……
身内の指紋は最初に調べとくもんじゃないの?というツッコミはさておき、ラストには検事たちがニッキイを暖かく(?)受け入れているのがいいですね。
ちなみに指紋による科学捜査は19世紀末頃には確立していたようです。へえ〜へえ〜へえ〜。▶︎指紋の基礎知識や歴史、種類について | 齋藤鑑識証明研究所
10時の学者
1952年発表。
ニッキイから博士論文審査試験に招かれた「わたし」。ところが受験者の大学院生は試験直前に殺害されていた!
次々に浮かぶ容疑者たち。ニッキイが見出した意外な犯人と凶器とは?
研究者どうしの確執、おそろしや。ドイツ軍から接収した武器が部屋に飾られているなど、時代性も感じられておもしろかったです。
エンド・プレイ
1950年発表。
マクナルティ教授射殺事件の捜査をめぐり、「わたし」は陸軍情報部のエドワーズ大佐と対立していた。
犯人は教授が亡くなる数時間前に、言い争いをしていた男、トロウブリッジなのか?
それとも、この事件は教授の自殺なのか?
「わらの男」では指紋を使った捜査が登場しましたが、本作では拳銃の発射残滓を調べるパラフィンテストが、証拠として登場します。(精度が低いため、現在ではほぼ使用されない手法、らしい)
そういった科学捜査に基づいた主張を、ひらめきと論理でさらりとひっくり返す、ニッキイの推理が爽快な一編です。
(というか、被害者と一緒にいた人物が一番怪しいに決まってるのに、なぜかその人物を疑わない警察 笑)
時計を二つ持つ男
1962年発表。
心霊現象は実在するのか?それとも嘘っぱちか?
大学の教職員クラブで披露された、夏の休暇の不思議な事件。ニッキイの意見は果たして?
これもまた「九マイル」のようにわずかな情報から推理が展開されます。ニッキイの推理はいかにもそれらしいですが、真実は闇に葬り去られ……なところも、個人的には好き。
おしゃべり湯沸かし
1963年発表。
ニッキイは下宿先の2人の隣人。1人はコーヒー派、もう1人は紅茶派。
隣室から聞こえてくる湯沸かしの音と、代理で受け取った郵便物。たった2つのヒントから導かれる驚きの事件とは。
学会参加者を宿泊させるために、町中の空いてる部屋という部屋に客が詰め込まれるという状況が、もうカオス。
下宿先が急に相部屋になったら嫌だけど、世界中からやってくる参加者と交流するのはなんだか楽しそう。オチも含めてニヤリとさせられる一編でした。
ありふれた事件
1962年発表。
「わらの男」で登場したジョンストン検事が再び登場。かつて自分の捜査をニッキイにひっくり返された(?)縁もあってニッキイ・わたしと3人で食事をすることに。なんだかんだ仲良くやってるようで、微笑ましい。
そこで話題は雪に埋まった死体の謎に。新年早々のブリザードに埋もれ、1月下旬の今になってようやく発見されたこの死体。ジョンストン検事によれば、これは「よくある事件」らしいのですが……
なぜ犯人は雪の中に死体を埋めたのか?が事件を解く鍵になります。相変わらず一番疑わしい人物を疑わない、警察のポンコツさが笑えます
(ところでこの話だけ、名前の間違いなど誤植が多いです。なぜだろう?登場人物の多さも相まって、読みづらかった……)
梯子の上の男
1967年発表。
工事現場の穴に転落死した教授と、梯子から転落死した男。この二つの事件を結ぶものは?
犯人の戦略をチェスに見立ててノリノリで解説するニッキイが楽しそう。(ただし、ニッキイのチェスの腕前ではそれほどでもないらしい)
九マイルは遠すぎるの次に読みたい おすすめ作品
ちょっとした手がかりから意外な結末、な2作品をご紹介!
遠まわりする雛 「古典部」シリーズ /米澤 穂信
何気ない、校内放送に隠された秘密とは?
高校生 折木奉太郎が、たった一文の放送から推理を巡らせる、「九マイル」のオマージュ作品が収録されています。
古典部シリーズ未読の方は、1作目 氷菓 からお楽しみください。
奇商クラブ /G・K・チェスタトン
ロンドンの街路にひっそりと存在する、その名も「奇商クラブ」。クラブにまつわる奇妙な謎とは?
ちょっとした「不思議」「違和感」から推理を巡らせるスタイルは、ニッキイ・ウェルトに通じるものがある、かも。
未読なのですが、読むのを楽しみにしている1冊です。
おすすめ作品、他にもいろいろ!
当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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