
クセ強で、グロい。だけど壮大で、驚きたっぷり。そんな小林泰三SFの濃ゆい部分を煮詰めたようなSF短編集、目を擦る女の感想を書きました。
目を擦る女 あらすじ
小林泰三先生らしい、こゆーい7作品を収録。
なお、短編集 見晴らしのいい密室と、半分以上の収録作品が重複しています。(以下の赤字部分)
| 見晴らしのいい密室 | 目を擦る女 |
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- 著者:小林 泰三 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:早川書房 2003/09/15
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 小林泰三氏について
小林泰三(こばやしやすみ)先生は、1995年 玩具修理者 で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビュー。
ホラー、SF、ミステリーと、多彩なジャンルで読者を楽しませてくれましたが、2020年11月に残念ながら逝去。
以下に作品の一部を並べました。(書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ)
小林泰三先生のおすすめ作品については、以下の記事をご覧ください。
目を擦る女 感想
うん、表紙が怖い!
たしかに内容には合ってる。でももっとキャッチーなイラストにして、多くの人に手に取ってもらって欲しいなあ。でも中身がだいぶとんがっているから、やっぱこの表紙が最適解なのかなあ。
そんなことを延々と考えてしまう、重度ヤスミスト(※小林泰三ファン)の管理人です。
見晴らしのいい密室 と半分以上内容が重複しており、個人的には「見晴らし」の方が好きなんですが、目を擦る女に登場する「蚊子さん」のインパクトも捨てがたい。
もちろん、小林泰三作品コンプリートを目指すなら、必読の1冊となります。
目を擦る女
引っ越しの挨拶のため隣の部屋を訪れた操子。部屋の住人の不気味な女は、なぜか「自分は眠っている」と言い張るのだが……
小林泰三さんらしい、不気味さと湿っぽさ全開のホラーSF。この世界は現実か?それとも誰かの夢なのか?薄膜 1枚隔てたところに、絶望的な世界があったらと思うと……
目を擦ることで2つの世界が入り混じるシーンが印象的でした。
超限探偵Σ
どんな謎も、たちどころに解いてしまう、その名は超限探偵Σ!
報酬も名誉もいらない、素晴らしく芳醇な香りを称えた事件こそが自分への報酬であると、うっとり呟くΣ(シグマ)は、まるで、とある単純娯楽マンガの魔人や、硝子の塔に招かれた名探偵を彷彿とさせます。
その真相はまさかの……えーーーーそんなのありですかw
ちなみに超限探偵Σは、更新世の殺人にも登場。また、「仮想世界」の正体は、正直者の逆説を読めば明らかになります。(どちらも 大きな森の小さな密室 東京創元社 収録)
あるときはバカミスの世界、あるときはSFミステリーの世界を変幻自在に飛び回る、超限探偵Σ!小林泰三作品の中でも大好きなキャラクターの1人です。
脳喰い
ぐーろーい!タイトルそのまんま、ぐーろーい!
シミュレーション仮説的な、この世界が実在するのか、それとも仮想空間内にあるのかは、区別がつかないよね、という話ですが、小林泰三せんせの手にかかれば、こんなにグロくなる笑
あと、西山下腕彦ってなんだよ。主人公につける名前じゃないよ。名前に意識半分くらいもってかれるよw
ラストの河子のセリフが意味深。もしかするとずっとずっと前から、この世界は脳喰いに侵されていたのかもしれない。
空からの風が止む時
実はこの世界の正体は……という、展開は、小林泰三作品の中でもよく登場するんだけど、これもまた奇想天外な世界でした。
「海を見る人」や「時計の中のレンズ」に、ちょっと雰囲気似てるかも(どちらも 海を見る人/小林泰三 (早川書房)に収録)
次第に重力が衰退する世界。空から吹く風は、世界の縁へと流れていく。いったいこの世界はどんな姿をしているんだろう?
他にも星虹(スターボウ)という自然現象があったり、時間の単位が独特だったり(刹那、とか、牟呼栗多とか、仏教由来の単位が使われている)ところなんか、めっちゃ想像をかき立てられます。
(刹那は10^−18を表す単位、牟呼栗多は48分を表す単位ですが、これが日付や年の単位ぽく使われています。この世界が、人類の感覚と比較し、非常に短い時間の中に存在していることを示唆しているのかも)
刻印
ある日自宅のトイレを開けたら等身大の蚊エイリアンがいました。ぎゃー。
話しかけても「ぶう〜ん」としか答えない蚊に、「ブウーン人ですか?」「それともブウーン蚊(ブン)かな?」と、頑張って会話しようとする主人公が笑える。お前すごいな。
そんな蚊エイリアン、こと蚊子さん。生き延びるため主人公宅に居候するうちに、だんだん……あれ、おかしいな、だんだん蚊子さんが可愛く思えてきたような……いやでもやっぱ、無理でw
もともとは、プレステ2のゲーム「蚊」をもとに編まれたアンソロジー、その名も蚊 コレクションに収録されてた作品なのだそう。
あったね、そんなゲーム。
未公開実験
丸鋸遁吉(まるのこ とんきち)は怒っていた。
「ターイムマスィーーン」を発明して、何度も歴史を改変しているのに、友人3人がちっとも理解してくれないからだ。
今日こそ「ターイムマスィーーン」の偉大さを知らしめててやると、丸鋸は3人を呼び出して実演を始めるのだが……
シミュレーション仮説をもりこんだタイムマシン短編。けっこう高度な内容な気がするのに丸鋸と3人のアホアホすぎる会話劇のせいで全く頭に入ってきません。なんなんだこれ。
魏志倭人伝を改変して邪馬台国の場所を詳細不明にしてやった、などと豪語する丸鋸ですが、友人3人はピンと来ない様子。
もう一度歴史を変えてやる、と過去に出発しようとする丸鋸を待ち受ける、衝撃のオチ。ギャグみたいな展開から、この結末は、さすがすぎる。
さあみんなでレッツ、「ターイムマスィーーン」!!
予め決定されている明日
算盤人(そろばんびと)のケムロは、算盤玉を弾いてひたすら計算を繰り返す、過酷な仕事を強いられていた。
そんななか、電子計算機の存在を知ったケムロ。この機械さえあれば、自分はこの状況から脱出できる!電子計算機をなんとか使用して状況を脱しようと、ケムロは一計を案じるのだが……
ケムロの正体が、そして「予め決定されている明日」というタイトルの意味が徐々に明らかになる展開がおもしろい。ケムロのいる世界には3次元ではなくω次元で、「電子」が存在しないとのこと。いったいどんな世界なのでしょう?
目を擦る女の次に読みたい おすすめ作品
とにかく濃い!わんこたん推しのSF短編集2冊をご紹介します。
円 劉慈欣短篇集 /劉 慈欣
中国のSF作家 劉慈欣(りゅうじきん/リウ ツーシン)さんのSF短編集。歴史・哲学・貧困・宇宙……ほのぼのからハードまで、みっちり詰まった傑作ぞろいです。
特に表題作の「円」が、すごい。
秦の始皇帝と荊軻。史実では「暗殺対象」と「暗殺者」な2人ですが、作中では……?ということで、後は読んでのお楽しみ!
SF初心者からマニアまで、強くオススメしたい1冊です。
海を見る人 /小林泰三
旅をする世界。対立する2大国の世界。逆さまの世界……
かなり不思議で、ちょっぴりホラーなセカイと、そこに生きる人間たちの切ない物語を集めた、小林泰三ワールド全開のハードSF短編集。
ハードSFって、なんだか敷居が高いですが、海を見る人なら、ワクワクしながら読めること請け合いです。
おすすめ作品、他にもいろいろ!
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