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エボラ・ウイルスのリアルが、ここにある ホット・ゾーン 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

画像引用元▶Details - Public Health Image Library(PHIL)

1989年。アメリカヴァージニア州レストンのモンキーハウスで、輸入されたカニクイザルが次々に死亡する事件が発生。これは何らかの感染症なのか?調査の結果、その恐ろしいウイルスの姿が明らかになり…

パンデミックを封じ込めるため、奔走する医療者と研究者の極限の戦いを描いたノンフィクション作品、ホット・ゾーンの感想を書きました

 

ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 (ハヤカワ文庫NF)
ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 (ハヤカワ文庫NF)
 

 

 

ホット・ゾーンについて

1989年に実際に発生した、エボラウイルスのパンデミック「レストン事件」の状況を、関係者からのインタビューをもとに克明に描き出したルポルタージュ作品。

2019年にはナショナルジオグラフィックによってドラマ化もされました。2025年現在、残念ながら国内では配信されていませんが、予告編は視聴可能となっています。

 

 

  • 著者:リチャード・プレストン → Amazonの著者作品一覧はこちら
  • 翻訳:高見 浩
  • 発売:早川書房 2020/05/22
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象
    ▶︎5分間の試聴はこちら (リンク先で「▶プレビューの再生」を押下)
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著者 リチャード・プレストン氏について

アメリカのジャーナリストであり、特に感染症に関するフィクション・ノンフィクション作品で有名。

コブラの眼(1998年)は、架空のウイルスによるテロを描いたフィクションで、当時の大統領ビル・クリントン氏はこれを読んで、バイオテロに対する見識を改めたのだそう。(※以下、書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。)

 

コブラの眼 (上巻)
コブラの眼 (下巻)
デーモンズ・アイ: 冷凍庫に眠るスーパー生物兵器の恐怖

 

ホット・ゾーン 感想

ホット・ゾーンは1989年にアメリカで発生した「レストン・エボラ事件」当時の状況を克明に記したノンフィクション作品。

そもそもレストン・エボラとはなにか?エボラ出血熱とどういう関係があるのか?を読む前に整理しておいたほうがよいでしょう。

以下、森川茂氏による概説をもとに、まとめました。

 

  • エボラ出血熱は,1976 年にアフリカのスーダンとザイール(現 コンゴ民主共和国)で初めて大流行したウイルス性出血熱。
  • エボラウイルスにはザイール(60-90%)、スーダン(50-60%)、ブンディブージョ(25%)、アイボリーコースト(0%)、レストン(0%)の5種がある。(カッコ内はヒトの致死率)
  • 5種のうちレストンエボラウイルスだけはヒトには病原性はないと考えられている(感染した事例はあるが、抗体が作られたのみで発症事例はなし)
  • 5種のうちレストンエボラウイルスだけはフィリピンに分布。サルでの流行、豚での感染事例が報告されている。

太字で示したレストンエボラウイルスが初めて見出されたのが、1989年、米国バージニア州レストンでの、いわゆる「レストン・エボラ事件」。フィリピンから輸入されたカニクイザルのコロニーの中で集団感染が発生したことがきっかけでした。

 

結局、レストンエボラウイルスはヒトでは発症しないことが後に明らかになるのですが、パンデミック当時は、ウイルスの正体すら不明の状況。

いつ誰が発症してもおかしくなく、一歩間違えれば自分も死ぬかもしれない。そんな極限の恐怖の中で、事態と向き合う研究者たちの様子が、臨場感あふれる筆致で、描写されています。

 

発症の経過は、へたなホラー映画よりも恐ろしい

ホット・ゾーンの第1章は、シャルル・モネ(仮名)という患者のエピソードから始まります。

刻一刻と熱病に侵され、脳の機能もむしばまれ、血管は穿刺が難しいほどに柔らかくなり(これを茹でたマカロニと表現するセンス!)、文字通り「崩壊」していく人体。

結果、モネは死亡、彼を診療したムソキ医師も感染し、生死の境をさまよいます。現実のものとはおもえないすさまじい経過に言葉もないのですが、実はこれ、エボラウイルスではなく、その近縁のマールブルグ・ウイルスによるものでした。

マール・ブルグウイルスの致死率は25%。この致死率と劇的な症状だけでも十分おそろしいのに、エボラ・ザイールの致死率は60-90%だというから、想像を絶します。

 

レストン事件の描写の前に、これらエボラウイルスの仲間(フィロウイルス属)によるパンデミックの事例が挿入され、恐怖を掻き立てます。

 

プロフェッショナルだからこそ、感じる恐怖

ホット・ゾーンで特筆すべきは、ウイルスに対峙する研究者たちの、プロフェッショナルの部分だけでなく、日常の部分にも光を当てていること。

アメリカ陸軍のナンシー・ジャックス中尉もそのひとり、研究者のキャリアをバリバリ邁進する彼女も、家に帰れば子供の世話し、家事をこなすごくふつうの女性。夫からはウイルス研究という危険なキャリアに苦言を呈されていたり……

 

そんなナンシーが、ウイルス感染したサルの解剖の際、ふと自身のゴム手袋の裂け目に気づき、恐怖にに青ざめるシーンは特に印象的。

 

自分は隔離される。1週間後には発症するだろう、家に食料も現金もない、家政婦に払う給料は?こどもたちのお世話は?

プロフェッショナルでも、ひとたび危険に遭遇すれば、とりとめのない恐怖の思考に押しつぶされていく。そんな一人の人間としてのナンシーの思考を克明に描いています(結局感染はしていなかったので、ナンシーも読者も一安心……)

 

リアリティあふれる、ウイルスとの戦い

同様にレストン事件でも、感染したサルの検体を、そこまでの恐ろしいウイルスとは思わず臭いを嗅いでしまい、そのことを上司に打ち明けるべきか?逡巡する大学院生が登場したり。

専門家であってもウイルスは怖いし(むしろ知識があるからこそ恐怖感も大きい)、動揺し正常な判断ができなくなることがある。

 

一方で、陸軍とCDC(米疾病予防管理センター)の間で主導権争いの確執があったり……

そんな、「現場のリアリティ」が克明に描かれているのです。

 

エボラ・ウイルスに関する現在の状況

ホットゾーンは1994年刊行で内容が少し古いため、エボラウイルスについての疫学的な最新情報についても付記します。

引用元(WHOのページ):

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/ebola-disease

  • 以下のものとの直接接触(傷ついた皮膚や粘膜を経由)により、他の人からウイルスに感染する可能性がある
    • エボラ出血熱に罹患した、または死亡した人の血液または体液。飛沫感染も起こりうる。
    • 病気にかかった人や病気で亡くなった人の体液(血液、排泄物、嘔吐物など)で汚染された物体または表面。
  • いくつかのワクチンが開発・承認されている(致死率を半減程度にするという報告がある)

恐ろしい感染症であることは言うまでもない。

と同時に、これらを知識として知っておくこと。ウイルスを理由に当該地域の方への差別が起こることのないように、また必要な医療的援助が行き渡るようにすることが、いま「エボラ安全圏」に住む私たちにできることなのかな、と思いました。

 

国境なき医師団への寄付も、ひとつの「できること」かなと思います。

 

ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 (ハヤカワ文庫NF)
ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 (ハヤカワ文庫NF)
 

 

ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 の次に読みたい おすすめ作品

次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。医学のノンフィクションってなぜか胸が躍るよね。

 

世にも奇妙な人体実験の歴史 /トレヴァー・ノートン

 

人体実験から医学は発展する!?

古今東西様々な人体実験をおもしろおかしく紹介しつつ、医学の発展について学べる良書。感染症研究の歴史も、人体実験とは切っても切れない関係にあったことが、学べます。

 

世にも奇妙な人体実験の歴史
世にも奇妙な人体実験の歴史
 

 

感想記事はこちら▶︎(読了)読書感想文/世にも奇妙な人体実験の歴史 - わんこたんと栞の森

 

妻を帽子とまちがえた男 /オリヴァー サックス

 

病は、心の質を損なわない

脳機能に障害がある。それってどういうことなんだろう?

妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。などなど、不思議な症状があらわれる24人の患者たち。

病気と向き合うとはどういうことなのか?読めば世界が変わって見える、1冊です。

 

妻を帽子とまちがえた男
妻を帽子とまちがえた男
 

 

感想記事はこちら▶︎(読了)読書感想文/妻を帽子と間違えた男 オリヴァーサックス - わんこたんと栞の森

 

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