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暗黒館の殺人 第2巻を考察しながら読んでみる

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

綾辻行人 館シリーズの7作目にして文庫全4冊の大長編ミステリー、暗黒館の殺人

とにかく長い上に、その怪奇幻妖っぷりは過去最高レベル。館は全4棟あり、登場人物の血縁関係も複雑。さらに視点はあちこちに跳躍し、読み切るだけでなかなか大変な作品です。

というわけで、全4冊まとめてではなく、1冊ずつ感想を書くことにいたしました。

第2巻に入ってからは、とうとう殺人事件が発生、暗黒の迷宮はますます混迷の度合いを深めていきます……

第1巻の感想記事はこちらへ

 

第2巻は、1件目殺人~2件目の殺人発生まで

 

CAUTION!

あくまで暗黒館の殺人 第2巻までの内容を記載していますが、核心に触れる箇所や、過去のシリーズの内容に触れている箇所があります。未読の方は充分ご注意ください。

 

暗黒館の殺人(二) (講談社文庫)
暗黒館の殺人(二) (講談社文庫)
 

 

 

第1巻である程度背景情報がおさえられていたこともあり、第2巻でスイスイ読めた。

事件の進行はスローペース。なかなか真相が明らかにならなくて、ちょっとじれったいぞ。

以下の、第1巻で考察された前提情報をもとに読み解いていきます。

 

第1巻で考察された前提情報
  • 江南孝明が黒いセダンで暗黒館を訪れたのは1991年9月23日のこと
  • 玄児、中也が登場し、十角塔から正体不明の青年(自称:江南)が落下したのは1958年9月23日のこと(1991年とミスリードされている)
  • 年齢的に、中也=若かりし中村青司かも?

便宜上、1991年の江南孝明くんを「江南くん」、1958年に塔から落下した自称江南青年を、「江南氏」と呼称します。

 

相変わらず正体不明の江南氏

第2巻では江南氏についての情報はほとんどなし。

市朗少年が偶然手に入れた、江南氏の焦げ茶色の札入れには、「着物姿の中年女性とやせっぽちの子供」の写った写真が入っていました。

第1巻で江南くんが持っていた写真にそっくり!だけど、年代が違うので当然別物。

これが江南氏の正体を示すヒントになるのかなあ。

 

もうひとつ、江南氏の身元のヒントになりそうな「大事な懐中時計」は慎太が持ち出して市朗の隠れ場所にもってきてしまったようです。

 

年代トリックのヒント再び

2巻では「1958年」を意識させる描写は少なめ。

  • 征順が17年前、妻の望和と出会ったころを思い出しつつ「もちろん今とは違って、日本中どこにいてもいろいろと大変な頃でしたが……」と回想する場面。
    1958年の17年前は1941年。太平洋戦争勃発の年ですから、「大変だった」、というのもなんとなく状況に合っていそう。

  • 市朗少年が悪夢の中で回想する、実家の雑貨屋の新品の看板。
    1991年に江南くんが訪れた際、雑貨屋「波賀商店」の看板は「ひどく古びた」と書かれているので、ここにも年代の差が生じていることがわかります。

 

暗黒館、孤立する

1958年9月25日の昼頃のタイミング?で、外に電話が通じなくなっていることが明らかに。

  • 島に出入りするモーターボート→衝突事故で破損
  • 島に出入りする手漕ぎ船(江南氏が使用?)→もやい綱がほどけて湖に流出
  • 島と湖岸をつなぐ浮橋→市朗少年が渡ったため崩壊
  • 暗黒館にいたる山道→土砂崩れで通れず

徹底的に孤立状態に。いよいよ「館シリーズ」らしくなってまいりました!

 

第一の殺人 蛭山さん殺害について考察

死にかけていた蛭山さんが何者かに絞殺される事態に。

ついに!第1の殺人が発生!(ここまで長かったなあ)

第2巻の前半は蛭山さん殺害の推理パートがメインに。以下に時系列を整理します。

 

(以下はすべて1958年パート)

  • 9月23日午後5時 蛭山が湖岸に戻る。(使用人しのぶ証言)
  • 9月23日午後6時頃 地震で倒壊した湖岸の小屋の壁に、蛭山が下敷きに。(市朗少年目撃)
  • 9月24日午前? 蛭山、自力でモーターボートに乗って暗黒館へ渡る。しかしモーターボートが岸に激突(市朗少年目撃)
  • 9月24日午後3時 蛭山が南館に搬送される。このとき、南館の隠し通路は封印されている
    (同日夜 ダリアの宴 催行)
  • 9月25日午前1時か1時半くらい 蛭山の寝ている部屋の入り口前に座っていたしのぶ、一度自室に戻る
    (しのぶは少しうとうとしていた様子)
    (野口医師 9月25日午前1時くらいまでは北館2階の自室で伊佐夫と飲んでいた)
    (鶴子 2時半くらいまでは自室で起きていた)
  • 9月25日午前2時~4時 脱がせておいたズボンのベルトで、何者かが蛭山絞殺
    (野口医師による死亡推定時刻)
  • 9月25日午前8時半 しのぶ、蛭山の死亡に気づく

 

犯人が隠し通路を使い、入口にいたしのぶに気づかれず侵入して、蛭山さんを殺害したなら、隠し通路の存在を知っているものが犯人、と玄児は考察します。

 

南館の隠し通路を知っている

暗黒館の昔からの関係者はだいたい知っている。

玄児、征順、清、望和、美惟、美魚と美鳥、使用人全員、慎太、野口医師

南館の隠し通路を(たぶん)知らない

首藤一家(伊佐夫、茅子、首藤氏(所在不明))、江南氏

蛭山さんは死にかけていて子どもでも殺害は可能。逆言えば、もうすぐ死にそうな人間をあえて殺すという点でも不可解な殺人です。

犯人は蛭山さんが死にそうだ、という情報を知らなかったのでは?という考察もなされました。

 

蛭山さんが瀕死だと知らなかった

美惟、望和、美鳥、美魚、清、慎太、鬼丸老、茅子

 

隠し通路を知っている人物が犯人のような気がしますが、これだけではさっぱり絞り込めません。

蛭山さんの寝ている部屋の前にいた、しのぶが自室に戻った9月25日午前1時か1時半のタイミングを狙った可能性や、しのぶの証言に間違いがあった、という可能性もありそう......

また、料理人の宍戸さんは「何年も前につまらない口論を蛭山とした」と証言していますが、このことも何かヒントになるのかしら?

 

双子の姉妹による「あだ名」に法則性はあるのか?

第1巻の時点から、シャム双生児の美鳥、美魚姉妹は、各人物にあだ名をつけて遊んでいました。このあだ名、なにか法則性があるとか、ヒントになったりとか、しませんかね?

 

暗黒館の館 あだ名一覧
  • 征順→飛べない鷹もしくは鷲(タカ・ワシ)。鼻筋のとがった様子と、館にとらわれている様子から?
  • 望和→赤蜻蛉(アカトンボ)。息子の清を心配して、あちこちいったりきたりしている様子から?
  • 清:しわくちゃの猿(サル)。早老症の見た目から?
  • 美鳥と美魚:蟹(カニ)。結合した体の様子から?
  • 玄児:鼫(ムササビ)。理由不明
  • 中也(私):ミミズク。理由不明
  • 村野医師:熊(クマ)。見た目から?
  • 鶴子:銀狐(ギンギツネ)。理由不明
  • 蛭山:蛙(カエル)。ピョコピョコ歩く様子から?
  • しのぶ:家鴨(アヒル)。理由不明
  • 慎太:鼠(ネズミ)。理由不明
  • 美惟おばさん→仙人掌(サボテン)。姉妹を産んで以降、呆けているため?
  • 首藤の伯父様→狸(たぬき)理由は不明。
  • 茅子(首藤夫人)→海月(クラゲ)理由は不明。
  • 伊佐夫(首藤息子)→蚯蚓(ミミズ)理由は不明。

 

美鳥・美魚姉妹の部屋の様子

姉妹の部屋を訪れた中也。

2人の服装の詳細が描かれました。山吹色の地に黒や赤茶の細い糸で大ぶりな格子縞 の黄八丈。帯は葡萄色の兵児帯。足には赤い鼻緒のぞうり。(いつか絵を描いてみよう)

 

美魚の部屋には不思議の国のアリスの本も置いてある様子。中也は「もう片方の美鳥の部屋には鏡の国のアリスがおいてあるのかな」なんて想像しています。

もし中也が、若かりし頃の中村青司であるならば、このことが黒猫館のインスピレーションになったに違いない。

他にも、征順が作った蝶が飛び出すびっくり箱やら、3年前に死んではく製になった黒猫のチェシャやら、風車の形のかわった置時計やら…姉妹の部屋の小道具について、妙に描写が細かいのも気になるところ。

 

姉妹に求婚されてたじろぐ中也。中也には故郷に許嫁がいること明らかになりました。この許嫁、のちに青屋敷でなくなった奥さんと同一人物……?

 

18年前の事件について

18年前の9月24日ダリアの日に、初代玄遥が殺され、その娘婿卓蔵が自殺していたことが明かされます。

当時屋敷にいたのは玄遥、娘婿の卓蔵、柳士郎、美惟、望和、玄児9歳。(卓蔵の妻 桜はすでに亡くなっていた)

野口先生はそれ以前からの古い付き合いだが、今ほど頻繁には出入りしておらず。

使用人は鬼丸老と諸居静とその子、忠教がいました。

 

蛭山さんはおらず、征順が望和と出会ったのは17年前なので、やはりこの時代の暗黒館にはいません。「18年前に誰がいたのか」ってのは、大事な情報のような気がするなあ。

あと、征順や卓蔵など、娘婿たちが、暗黒館にやってきた経緯も地味に気になります。どうやって知り合ったんだ君たち。

 

玄児の過去も少しだけ明らかに

18年前の事件(玄遥の殺害)と同じ年の冬。旧北館の大火災に巻き込まれ、一度死んだ、と表現する玄児。だがその時のショックで過去の記憶を失ったようです。

 

太字の正体は?

暗黒館の殺人、作中にたびたび登場する太字の記載。当初は、各人物の脳内に浮かび上がった心の声だと思っていたのですが、どうやらちがうようで。

この視点、「複数の自我に寄り添い、多くの体験を共有するもの」と説明がなされているので、神=読者の視点ということでしょうか。

中村青司が時島に楽園の洋館を作った、という話を征順から中也が効いた際、(中村青司がそんな……という驚きがおもむろに浮上し、すぐにまた沈み)と書かれているのは、別に中也がそう考えたわけではなくて、読者視点の心の声、ということなのかな。

ううむ、ここまでちょっと読み違えていたかもしれません。

 

柳士郎と野口医師の関係

柳士郎は優秀な医学者であったこと。野口医師はかつて<ダリアの宴>に誘われたが、辞退したことも明らかになりました。

 

中也 疑問点を整理する

ここで中也くんが、暗黒館の謎の数々を、読者のために整理してくれます。ややこしくなってきたので、ありがたや。

といっても、これが読者へのミスディレクションの可能性もあり、油断はなりません。

  • あの<宴>は何なのか?
  • あの料理(肉)は何だったのか?首藤と茅子がありつこうとしている?
  • ダリアとはいかなる人物だったのか?
  • 玄児はなぜ<十角塔>に幽閉されていたのか?
  • 塔から落下した青年 江南 はなにものか?(中也は江南氏の顔に見た覚えがある気がするらしい)
    江南と柳士郎が対面したとき、なにが起こるのか?柳士郎氏はTEのイニシャルに覚えがあるようだが
  • <惑いの檻>とは?
  • 諸居静とはどんな女性だったのか?
    (玄児の乳母のような人物であり、後に一児を連れて屋敷を出ていった)
  • 十八年前、卓蔵は何故玄遥を殺したのか?卓蔵はそのあと自殺したことになっている?
    その現場で起こった「人間消失」とは?玄児はその消失を目撃しながら記憶を失ってしまったらしい。
  • 影見湖を染めた「人魚の血」が「吉兆」である、とは?
  • 早老症は浦登家に生まれる者にとって宿命的なリスクである、とは?
  • 望和について玄児が述べたこと。「死にたいと願っても彼女は死ねない」とは?

 

第二の殺人 望和殺害について考察

第二の殺人が発生し、現場の状況から犯人はアトリエ(殺害現場)→休憩室→(破られた赤い模様硝子)→赤の広間へと逃走した、と判断されます。

時系列を整理してみましょう。

  • 9月25日午後5時50分 望和がアトリエに入る(望和の夫 征順証言)
  • 9月25日午後6時35分 望和殺害?(アトリエで落ちて壊れた時計から)
  • 9月25日午後7時10分 アトリエ入り口前のブロンズ像が倒れていることにきづく→ 望和を発見

なお市朗少年が割れた窓から赤の広間に侵入したのは同日午後6時45分のことで、この直前、北館のホール?で酔っぱらった伊佐夫らしき人物と遭遇しています。

うーん、やっぱり犯人はわからん。壊れた時計ってのも推理小説では時間偽装の定番ですし。

勘ですが、夫の征順が怪しい気もします。望和がアトリエに入ったときに、一緒に部屋に入り、望和を殺害。アトリエの入り口を通って普通に逃走したのかも。

(破られた赤い模様硝子と、壊れた時計は偽装工作。そのあとで伊佐夫によってブロンズ像が倒されたのは、予想外のできごとだった。みたいな)

殺害理由?知らん。

 

暗黒館の殺人 第2巻で解決した謎

第1巻で浮かんだ謎のうち、以下の2点は解決しました。

  • モーターボートで岸に激突した蛭山さん。自力でモーターボートに乗った?
    それとも誰かに乗せられて岸辺にぶつけられた?

    →市朗の目撃情報からするに、地震でけがを負いつつ自力でモーターボートに乗って激突してしまった様子。ここに事件性はなさそうです。

  • 北門と湖畔をつなぐ浮橋が使用不可に。誰が、なんのために?

    →犯人は市朗。9月24日の午後1時頃に島を渡ろうとして、浮橋が損壊。市朗少年はなんとか橋を渡り切りましたが、結局島に閉じ込められることに……
    浮橋の消失は、誰にとっても予想外のできごとだったのですね

 

第2巻でうまれた新たな謎

第2巻では、謎が解決するどころか、さらなる泥沼へはまり込んでいってしまったようです

  • 中村という建築家(※年代的に中村青司ではない)が時島に建てたハーフティンバー様式の洋館について、征順から中也に語られます。それを聞きながら「当然の疑問・違和感」を覚える中也。一体何が違和感だったのか?

  • 瞑想する詩人の家/宮垣杳太郎
    の署名本に書かれた為書の名前をみて驚く中也。いったい彼が見た名前とは?

    ちなみに宮垣杳(葉)太郎先生、迷路館の殺人で登場する、館の主です。さらっと登場させてくるので、あやうく見逃すところだった……

  • 第二の殺人 望和を殺した犯人は?

  • 館にしのびこんだ市朗少年の追跡がきっかけで、多量の人骨が埋められていることが発覚しました。おまけにムカデもたっぷり。いやすぎる
    人骨が埋められていたのは十角塔の裏手当たり、どちらかといえば島の外縁に近いところかな。
    この場所に埋められている人骨の正体は??(まさか不老不死のために人肉を食べていた、とか?キャー)
    慎太の隠れ家にもどこから拾ってきたのか骸骨がありましたが、これも埋められた人骨のひとつ、なのかしら。

  • 美鳥・美魚姉妹「玄遥は特別だけど失敗」「成功の方はいない」「玄児は特別」

    征順「私たちの生命そのものが、暗黒館というこの屋敷に繋がれ、囚われてしまっているような(中略)」
    いったいこれらは何を意味するのでしょうか?

 

第3巻へ続く!

いやはや、謎が解決するどころか、ますます自体は混迷の泥沼へ。

2件の殺人事件が(やっと)発生しましたが、犯人もさっぱりわかりません。

戸惑いながらも、次は第3巻を読み進めたいと思います!

(もっと江南くん出てこないかな~)

 

暗黒館の殺人(三) (講談社文庫)
暗黒館の殺人(三) (講談社文庫)