
オカルト系Youtubeチャンネルのファンブック企画。それは読者を喜ばせるための、「でっち上げの怪異の創作」のはずだったが……
登場人物の秘めた思惑が行き着く先に、あるものとは?
近畿地方のある場所についてで、ホラーの新たな地平を拓いた背筋氏の穢れた聖地巡礼について 感想と、ゆるめの考察を書きました。
穢れた聖地巡礼について あらすじ
フリー編集者の小林は、心霊スポット突撃系YouTuberチャンイケこと、池田の『オカルトヤンキーch』のファンブック化を企画する。
企画を出版社に通すべく、過去に『オカルトヤンキーch』動画内で取り上げた心霊スポットの追加取材(という名のでっち上げ考察)を行うことに。 池田と小林、さらに「幽霊が見える」ライターの宝城の3人は、ネットなどで集めた情報をもとに「考察」を深めていくが……
- 著者:背筋
- 発売:KADOKAWA 2024/09/03
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象
▶︎5分間の試聴はこちら(リンク先で「▶プレビューの再生」を押下)
登場人物どうしの会話やインタビュー、YouTube動画を中心に構成されているので、聴く読書のとの相性は最高!
いつもと違う旅先で聴くと、雰囲気ばつぐんかも……!?
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著者 背筋氏について
小説投稿サイト、カクヨムで連載していた近畿地方のある場所についてが2023年にKADOKAWAより書籍化されデビュー。
著者のXアカウントはこちら▶https://x.com/sesujisesujises
穢れた聖地巡礼について はコミカライズ版も(下記書影の右端)。あなたの気になる媒体で、背筋ホラーにチャレンジ!
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口に関するアンケート 紹介記事はこちら
▶朗読版の演出がかなりよかった 口に関するアンケート 感想と考察 - わんこたんと栞の森
近畿地方のある場所について 紹介記事はこちら
穢れた聖地巡礼について 感想
オカルトユーチューバーの池田、幽霊に興味がないフリー編集者の小林、そして幽霊が見えるライターの宝条。
3人でタッグを組んで、書籍化企画を進めていく中で、3人の真意が徐々に明らかになる展開が面白かった!
Youtube動画が主体のストーリーなところは今風でありながら、子供の頃にこわごわ読んだオカルト本のような不思議な懐かしさを感じました。
ところどころ、近畿地方のある場所について、とつながりを感じられる場面もあり、読み比べて探してみるのも面白いと思います。
メインキャラ3人の人物像と怪異の正体について、以下に感想と考察をまとめました。
以下、穢れた聖地巡礼についての読了を前提とした記載があります。未読の方はご注意ください。
「強欲な簒奪者」フリーの編集者 小林
第三章 愚かな三人で、「強欲な簒奪者」として小林の過去が明らかに。
取材相手から恨みをかい、しかもその相手が自殺、というエピソード。もっとも「死者の霊から呪いを受けそう」な小林ですが、そうはならないのが面白いところ。
それどころか、「相手の負のオーラ」を読み取ってハメるという特殊能力?を得て、ちゃっかりお仕事に活用。
他人に興味が無く、相手が自分を恨んでいようがいまいが、どうでもいい、と思っている小林は、ある種もっとも呪いが効きにくいキャラなんでしょうね。
(ところで、、、近畿地方のある場所についてに登場する「K氏」は、小林のことだと当初は考えていました。相手をうまいこと窮地に追い込んで、おいしい取材ネタをいただくスタイルもそっくり
ところが、近畿地方のある場所について 文庫版では「K氏」ではなく「香川氏」という表記になっています。小林とは別人のようです)
小林を表す「簒奪者」ということばは、六部を殺して金を「奪った」村人と重なるものがあります。
六部を殺した村人は、奪った金で裕福になったその一族が、やがて没落する、というエピソードが付け加えられることもあるそうな。
小林は呪いの影響を受けることはないけれど、編集者として大成することもなく、出版不況のあおりをうけて、いつも金に困っている。そういう立ち位置のキャラクターなのかな、と思いました。
呪いに影響されない。けれど、多分幸せにもなれない。そんな小林さん、次回作でも登場しないかしら?と密かに楽しみにして言います。
「浅はかな巡礼者」YouTuber チャンイケこと池田
美術大で出会った同級生、鈴木優子に、空っぽの中身と評される池田。
同級生と「カナエさん」という名のこっくりさん遊びに興じる中、思わず優子への呪詛をカナエさんに、ぶつけてしまいます。
その後に鈴木優子の死亡記事を見たことで、「自分がかけた呪いのせいで、優子を殺してしまった」という疑念にかられる池田。
なんとも哀れだし、強がっていても3人の中で一番精神が弱い池田君。それゆえに、一番読者が感情移入してしまうキャラクターでした。
近畿地方のある場所については、あくまで怪異がメインであって、物語性・キャラクター性が控えめだったのですが、個人的にはこういう物語性とか、感情移入できる作品が好み。
なので、管理人わんこたんは「近畿地方」よりも穢れた聖地巡礼について、のほうが好きです。
「貧しい共犯者」霊が見えるライター 宝条
かつて幽霊を利用して人を殺してしまった宝条。そのことをずっと心の奥底に抱えている彼女の立ち位置は、どこか池田と似ているような。
小林の「共犯者」である宝条ですが、池田に救いの手を差し伸べようとするあたり、小林よりちょっと優しさが残っていると言うか、姉御肌を感じます。
(そんなにお金に困っているようには見えませんでしたが、貧しい共犯者の「貧しい」は、どこから来ているんだろう?)
実家は名のしれた厄除け神社とのこと。もしかして、近畿地方のある場所についてで登場した、厄除け神社は、宝条の実家だったりするのかな?
巡る、怪異
近畿地方のある場所についてでは、ある特定の地域に根差した怪異が、伝播の過程で変容し、人に危害を加えながら広がっていく様を描いていました。
穢れた聖地巡礼については、特定の場所にとらわれない、一見なんのつながりもない怪異が、実は生まれ変わりや乗り移りをしていく物語、だったのかな。
怪異そのものに「巡る」(生まれ変わったり、輪廻転生したり)力が備わっている。
そのうえで、巡る途中で生きた人間の悪意や恨みに触れて、怪異が形を変える。
ベースには「六部殺し」の伝承があるのかもしれないけど、もはや怪異はどんどん変容していっているので、その「正体」は不定形のように思えたり。
池田は最後にどうなったの?
最後のほうで池田が口走る不穏な言葉「死ねばいいのに」。これ、どういうことなんでしょうかね。
以下は、第四章 輪廻ラブホで登場する「敬一と付き合って死んだ女性」のモノローグからの引用。
- 私の代わりを見つける為に
- 輪廻の輪をつなぐため、巡礼の旅は続いた
- でも全然俺は足りなかった
- 僕は、もう終わっていたけれど、終わらせたくなかったから
- 見つけた。憎しみにまみれた愚かな人間を
- 声をかけたんだよ。次はあなたの番、て。
- 死ねばいいのにって、思ってもらえるように
途中で「私」だったのが「俺」「僕」に変わっているように、いろんな怪異が転生して巡ってぐちゃぐちゃになっているように思えます。
(ちなみにこの場面、Audible版で聴くと、途中で女性の声に男性の声が混じってくるんです。よくできている!)
そんな「巡る怪異」に池田は「見つけられて」、「あなたの番」になってしまった。
だから怪異の望むように、怪異を終わらせないように。ふとした瞬間に優子を憎んで、憎しみを広げようとしているんじゃないかなと。
今後、池田がどうなってしまうのか。宝城の父親の助言通り、誰かへの恨みや憎しみを抑えて生きていけるのか、それとも怪異にとりこまれ、敬一のようになってしまうのか。それは読者の想像におまかせってことかな。
でもこのラスト、好きです。ちょっといい話ふうに終わりそうで、終わらない。ホラーの結末にふさわしいではありませんか。
穢れた聖地巡礼についての次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。ほっこりもあり、ホラーもあり。
先祖探偵 /新川帆立
先祖を探す探偵事務所をひらく邑楽風子(おうら ふうこ)。様々な調査依頼をうけつつ、自分の母を探す風子ですが、その真相は……?
穢れた聖地巡礼について、でも取り上げられた、六部殺しのエピソードが登場。全体的にあたたかな物語なのに、その部分だけ異様な不気味さと哀しさを感じるのが、またおもしろい!
感想記事はこちら▶︎戸籍制度をめぐる、暖かく切ない物語 先祖探偵 感想 - わんこたんと栞の森
ぼぎわんが、来る 比嘉姉妹シリーズ /澤村伊智
「家庭内DV」「イクメン」などの社会的なネタも取り込みつつ、理不尽に被害をもたらす「ぼぎわん」の強烈さが印象的なホラー。
怖いのに読むのがとまらなかった……!
感想記事はこちら▶︎(読了)読書感想文 ぼぎわんが、来る - わんこたんと栞の森
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