この老人介護施設、何かがおかしい??サブロウ(100歳)と仲間たちによる、脱出劇を描いた、SFアクション!
小林泰三さんの遺作となった、未来からの脱出。ヤスミスト(※小林泰三ファン)がたっぷり紹介します。
未来からの脱出 あらすじ
森に覆われた謎の介護施設で暮らすサブロウ。
ある日彼は、自分の過去の記憶がなく、いつのまにかこの施設に閉じ込められていたことに気づく。 サブロウは老人仲間を集めて脱走を企てるが……
- 著者:小林 泰三 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:KADOKAWA 2020/8/26
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
未来からの脱出著者 小林泰三さんについて
小林泰三(こばやしやすみ)さんは1ホラー、ハードSF、サスペンスを得意とする小説家です。1995年、玩具修理者 で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビュー。
ホラー、SF、ミステリーと、多彩なジャンルで読者を楽しませてくれましたが、2020年11月に残念ながら逝去。この記事で紹介している未来からの脱出(角川ホラー文庫)が遺作となりました。
以下に作品の一部を紹介します。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。
小林泰三さんのおすすめ作品については、ぜひ以下の記事をご覧ください。
未来からの脱出 感想
以下、未来からの脱出の内容に触れている箇所があります。未読の方はご注意ください。
とにかく小林泰三さんだ!という要素がてんこ盛り。てんこ盛りすぎて、玉突き事故をおこすレベル。
- キャラクター同士のまどろっこしい会話劇は、代表作 アリス殺し のよう。
- ロボット三原則に縛られるAIの姿は灰色の車輪(短編集 天体の回転について 収録)のよう
- 記憶喪失を繰り返しながら、わずかな手がかりをもとに前進する、という展開は、殺人鬼にまつわる備忘録、をはじめとする田村二吉シリーズのよう。
などなど、ヤスミスト(小林泰三ファン)にはおなじみの展開が続きます。
そして何よりもぐっちょんばっちょんの汁たっぷり描写(グロとは違う、汁たっぷり)は、玩具修理者だなあと、思わずニヤニヤ。
残念ながら、一般におすすめしやすい作品ではないけれど
あまりにも小林泰三さんっぽさが濃い上に、会話劇中心の展開は、不慣れだと読みづらい。
管理人わんこたんはヤスミストなので、あー小林泰三さんらしいなあニヤニヤ、と楽しく読みましたが、l小林泰三作品を知らない方には、未来からの脱出はかなりお勧めしづらいです。残念。
とはいえ、最後まで読めば、希望を失わないその物語に、爽やかさすら覚えます。
協力者であり、敵対者でもあるAI。ロボット工学三原則ににしばられたAIと人間が、いつか本当に共存できる未来を願って。
……ときれいに〆たかったけどさあ。改造人間に「ハエ」やら「肉塊」やら嫌悪感マシマシな造形をチョイスせんでも。いくらか肉体改造が一般的な世界とはいえ、自分の意志でこの造形は選ばないでしょw
……このぶっとんだセンス、やっぱり小林泰三氏なのである。
全員100歳!? サブロウ ミッチ ドック エリザ
主人公チームは老人介護施設に入居している4人の男女。全員推定100歳の、その名もチームハンドレッズ。
1箇所だけ、サブロウの名字「岡崎」が登場する点、ヤスミストは見逃しません。小林泰三作品で頻繁に登場する、PCに強いクセ者老人、岡崎徳三郎を意識しているのは間違いないでしょう。
叶わぬ夢ですが、小林泰三作品オールスターズ(アリス、ビル、徳三郎、田村二吉、丸鋸博士、など)が一堂に会する作品、読んでみたかったなあ。
未来からの脱出を読んで、そんな一抹の寂しさを感じずにはいられませんでした。
未来からの脱出の次に読みたい おすすめ作品
ディストピアSFをキーワードに、おすすめ作品を紹介します。
新世界より/貴志祐介
■■年の日本。神栖66町の集落。
現代社会より、かなり質素で牧歌的に見えるこの世界の正体は。
徐々に明らかになる真実と、謎が謎よぶ展開に、どんどん読めてしまうはず。日本SF史に残る、ディストピアSFの傑作です。
紹介記事はこちら▶【感想と考察】貴志祐介「新世界より」小説版 - わんこたんと栞の森
なめらかな世界と、その敵/伴名 練
切れ味鋭いSF短編集。収録作シンギュラリティ・ソヴィエトでは、AIに支配されたソヴィエトとアメリカの対立を描いたディストピア系作品。歴史改変系SF大好きなあなたに贈る、珠玉の一編です。
おすすめ作品、他にもいろいろ
小林泰三作品もラインナップに入っています。
こちらにも小林泰三作品が。