しかしグループディスカッションの直前、思いもよらぬ事態が6人をおそい……
傑作就活ミステリー、六人の嘘つきな大学生の 原作小説の感想と伏線をまとめました。
六人の嘘つきな大学生 あらすじ
人気有名企業、スピラリンクスの新卒採用最終選考に残った6人。全員内定の可能性もあるといわれた6人は最終選考に向けて交流を深めていくが、直前になって「内定は1名のみ」という連絡が。
さらにグループディスカッション当日、部屋におかれた謎の封筒によって、6人それぞれの秘密が暴露される事態となり……??
- 著者:浅倉 秋成
- 発売:KADOKAWA 2021/3/2
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):聴き放題対象
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六人の嘘つきな大学生 登場人物
- 波多野 祥吾
主人公。立教大学で経済学を専攻。普通にいい人、を目指している。 - 九賀 蒼太
慶應大学総合政策学部。完璧、という言葉がふさわしい、容姿と態度の持ち主 - 袴田 亮
明治大学。大柄で高校時代は野球部。体育会系な言動を見せるが、場を和ませる気遣いを見せることも。 - 矢代 つばさ
お茶の水女子大学。モデルのような美貌の女性。お酒に強い。国際問題に興味あり。 - 嶌 衣織
早稲田大学の女子学生。自然で、完璧な就活生という雰囲気。 - 森久保 公彦
一橋大学。メガネで口数少ないが、グループディスカッションに向けて誰よりも資料を集める熱心な一面も。
- 鴻上 達章
スピラリンクス人事部長。6人の大学生に面接のお題を通知する。 - 波多野芳恵
著者 浅倉 秋成さんについて
鮮やかな伏線回収が美しい、と紹介される作家さん。
漫才マンガ、ショーハショーテン!の原作もされているとは知りませんでした。高校時代にM-1グランプリに出場したご経験もあるそうで。
▶レインボー・ジャンボ、高校時代の相方は小説家・浅倉秋成氏だった「今、小説家としてバク売れ」 | ORICON NEWS
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六人の嘘つきな大学生 感想
わんこたんの就活時代を思い出しながら読みましたが、こんなひどい選考方法の会社があってら、キレてしまいそう……
でも、ラストの伏線回収は見事で、読んでいる途中のモヤモヤは見事に吹き飛ばされました。以下に感想と伏線をまとめます。
まず構成がおもしろい
六人の噓つきな大学生では、以下の2つのパートが交互に描かれます。
- 2011年の最終面接でおきた、事件パート
- 2019年に、2011年の事件の関係者にインタビューするパート
2019年パートのおかげで、2011年に何が起きたのか?という謎が増幅され、読者の興味をぐいぐい引っ張ってくれる点がよかった!
2019年のパートから
- 2011年の「事件」の犯人が病死していること
- 犯人以外のメンバーは、犯人に対しそこまで不快感を表明していないこと
- 6人のうちひとりがスピラリンクスに内定し、その人物がインタビュワーであること
といった情報が明らかに。いったい最終面接の現場で、なにが起きたのでしょうか?
六人の嘘つきな大学生 の意外な伏線
僕は歩くペースを嶌さんに合わせ
僕(波多野祥吾)と嶌さんとでは性別の違いで歩くスピードが違うのかな、などと思っていましたが、実際は……
波多野くんの優しい性格を表しつつ、伏線を兼ねた描写はさすが!
••••••お兄ちゃんかと思った
毛布をかけてくれた波多野くんに対する嶌さんの一言。嶌さんの兄の存在がここで初めて明らかに。このとき嶌さんは突然泣き出してしまうのですが、涙の理由は終盤に明らかになります。
今日は衣織ちゃんといえども飲まなくちゃいけない日だから
お酒が苦手な嶌さんに、無理やりデキャンタでワインを飲ませる矢代さん。と見せかけて、実はみんなの思いやりに溢れていた飲み会のシーン。
しかしこの思いやりが、結果的に事件を引き起こすきっかけになってしまうとは……
就活小説といえば、やっぱりあの名作を思い出す
就活小説といえば、やはり思い浮かぶのは何者/朝井リョウでしょうか。
SNSを駆使する就活生、その焦りやもがきを解像度高く描いた傑作です。
一方で、6人の嘘つきな大学生では、ミステリーや伏線回収といったエンタメ要素を散りばめつつ、結末で読者の心をグッと掴んできます。
どちらの作品にも良さがあるんだよな〜
何者は心が苦しくなる場面もありますが、苦しい中でも行動すること、前を向くことを肯定してくれる、本当に素晴らしい作品。ぜひ6人の嘘つきな大学生と読み比べていただければ。
ちなみに朝井リョウさんと浅倉秋成さんは同い年。なんとなく、納得。
一部の情報だけで、他者は評価できない
ミステリー小説って、作品から読み取れる情報だけで推理させる、という点で、少ない情報で他者を評価するエンタメ、の最たるものですよね。
でも現実世界ではそんなことはできない。人間にはいろいろな側面がある。それを伏線回収という形で見事に見せてくれました。
ミステリー小説へのアンチテーゼのようでもあり、SNSの切り取りで判断することの警鐘のようでもあって非常に爽快でした。
病気で亡くなってしまった「彼」。あいつ、いい奴だったなあと思わせておいて、最後に彼の裏面がちょっとだけ垣間見えるのもすごくいい。
人間、いいやつ、すごいやつ、悪い奴なんて、簡単に評価できないものです。
スピラリンクスのことが嫌いになりそう
簡単に評価できるはずがない「人間」をわずかな時間で評価しないといけないのだから、企業の採用担当って、本当に大変。
その大変な採用を、学生本人に丸投げする会社が、このスピラリンクス。
1か月も6人の就活生の時間を拘束しておきながら、最終面接のお題を急に変更。しかも内定者を6人自身で決めさせるという暴挙。
自分の会社の貴重な新卒社員なんだから、責任もって会社で選考してくれよと、当事者だったら感じるに違いない。
わんこたんの就活時代に、こんな選考をする会社はありませんでしたが、もし現実にあったら絶対ろくな会社じゃないだろうなあ。
六人の嘘つきな大学生 の次に読みたいおすすめ作品
6人の嘘つきな大学生、のように、人は殺されないけど、謎解きが鮮やかで楽しいミステリー、がテーマに作品を集めました。
君のクイズ/小川哲
クイズ番組の決勝。最終問題で対戦相手がクイズの読み上げ前に正答したら……?
あれはヤラセか。それとも必然か。あなたもクイズを解きたくなる、傑作ミステリーです。
氷菓/米澤穂信
「古典部」の一員となって、学園の謎をとくミステリー。謎解きを通して、伝統ある高校の過去と秘密が明らかになっていきます。
耳で聴くAudible版氷菓で、登場人物の一員になって青春(?)に没入するのもおすすめ!
感想記事はこちら▶︎氷菓 青春×ミステリーな原作小説はやっぱりおもしろい - わんこたんと栞の森