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(読了)読書感想文/妻を帽子と間違えた男 オリヴァーサックス

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病気について語ること、それは人間について語ることだ―。妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。頭がオルゴールになった女性…。脳神経に障害をもち、不思議な症状があらわれる患者たち。正常な機能をこわされても、かれらは人間としてのアイデンティティをとりもどそうと生きている。心の質は少しも損なわれることがない。24人の患者たち一人一人の豊かな世界に深くふみこみ、世界の読書界に大きな衝撃をあたえた優れたメディカル・エッセイ。

 

 
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身近な人の脳神経に障害があったら?

 
こういう本を読むと、
「もし自分の家族/身近な人/etc の脳神経に障害があり症状が表れたら?」
「自分はどのような想いを抱くか?(不安?憐れみ?同情?)」
ということを考えずにはいられなくなります。
 
もし身近な人(自分ではない)の脳神経が侵されたら、当事者ではない私は
「不幸だな」とか「かわいそうだな」とか好き勝手に考え、思い悩む
かもしれませんが、まず
「当の本人はどう感じているのか?」
を忘れてはならない。そんなふうに思わせられた一冊でした。
 
ひたすら患者さんの観察記録が続くので、正直、読むのは大変ですが、、、
得られる気づきも多かったです。
長いので、一症例ずつ、噛みしめながらゆっくり読むことをおすすめします。
 

以下、個人的に印象的だった箇所をご紹介

 
「高度の神経学や心理学においては(中略)病気の研究と
その人のアイデンティティの研究とは
分けることができない。」
 
疾患の病態や機序を理解したからといって、
その人の全てを理解したような気になってはならない。
、、、肝に銘じます。
 
「「知的障害」ということばは、子供が持続していることを意味し、
「知能が低い」ということばは、欠陥のある大人を意味している。
これらのことばや概念には、深い真実と嘘とがまじっている。」
 
例えば知的障害を持つ30歳の方がいて、
その方の知能が小学1年生並みであると記述されていたとしても
それは「子供の状態が持続している」「成長が小学1年生でとまっている」
のと同義ではない。
その方には30年分の人生があり、その方の心(魂と呼ぶべきか?)の部分は
30年分の成長と経験を経ている。
6年分の人生を送っただけの小学1年生と同一視できるものでは決してない。
 
、、、当事者からしたら当たり前の事なのでしょうが、
自分にはな視点であり、頭を殴られたような衝撃がありました。
 
(トゥレット症候群の症状を医薬品で抑えたことで、
他の人と変わらない日常生活を送れるようになった代わりに、
音楽的な自己表現手段ー荒々しい創造的な大波ーを失ってしまった患者に対し)
(中略)レイは、私と話しあって重大な決心をした。働いている週日は
おとなしくハルドールを使用するが、週末はそれをやめて自由に「翔ぶ」のである。
 
パーキンソン病を十分に観察し理化することは、診療所のなかでは不可能である。
(中略)実際に生活しているところを観察しなければならないのだ。
 
一例として、、、
パーキンソン病の症状の1つに歩行障害がありますが、
横断歩道ようなシマ模様があると歩行障害が抑えられ
歩きやすくなることが知られています。
そのため、これを応用し、自宅の床に模様をつけるなどすれば、
生活しやすい環境に改善していくことが可能です。
こういった事は診療所の中ではなく実際の生活を観察することで初めて理解できる、
と言う臨床観察の基本に気づかされました。
 
おしまい