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(感想)緑の毒/桐野夏生 リアルな「苦悩」から目が離せない小説

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水曜の夜に、目を付けた女性をレイプする開業医の川辺。
被害者たちは結託して川辺を追い詰めようとするが、、、

 

 

 

緑の毒 あらすじ

39歳、開業医の川辺は、様々な嫉妬の感情にかられて、目を付けた女性をレイプする犯罪者だった。レイプ被害者たちの手によって、彼は少しづつ追い詰められていき、、、

緑の毒 感想と見どころ

「緑の毒」わんこたんの感想をまとめました。

登場人物の「苦悩」「欲」がリアル

被害者たちに追い詰められるレイプ犯、というあらすじだけ書くと、スカッと復讐もの、という印象を受けるかも知れません。

本作はそうではなく、登場するレイプ被害者5名、犯人、彼らの関係者、登場人物ほぼ全員、レイプ事件とは直接無関係のところで「苦悩」を抱えており、人物の背景にリアリティがありました。

人物の「苦悩」「欲」がリアルさを持って描かれる、という点では、吉田修一氏の小説「パレード」に近いものを感じました。

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※本ページの情報は2023年4月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにて
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読者の「欲」をかき立てる展開

読者としては、レイプ犯が追い詰められる展開も気になりつつ、登場人物の苦悩がどうなっていくのか、気になってしまう。

まるで、どうしようもない記事だとわかっていても、つい芸能人のゴシップ記事を読んでしまう。そんな 読者の「薄暗い欲」を掻き立てるような小説 でした。

「全てが解決しない」結末のリアリティ

最終的に「レイプ犯の川辺」は追い詰められますが、それ以外の登場人物の「苦悩」については一切解決しません。

投げっぱなし、といえるかもしれませんが、レイプ犯は捕まえた!ハッピーエンド!痛快スッキリ!という安直な結末より、いっそうのリアリティがあり、読みごたえがありました。

少しちぐはぐな時代背景描写も

本書は冒頭部分が2003年に文学雑誌に掲載され、2011年に単行本として出版されました。

完結まで8年を要したせいか、冒頭では「インターネットの交流掲示板サイトでレイプ被害者を探す」という描写があるのに、ラストシーンでは「スマートフォン」「SNS(twitter)」が登場するなど、時代背景にちぐはぐさがあります。

といいつつ、実はそんなの気にならないほど、展開に引き込まれてぐいぐい読んでしまいましたが。

まとめ

犯人だけでなく、被害者たちにも、裏表ある「緑の毒」。暴力描写はありますが性的描写はかなりぼかされており、レイプシーンが苦手な方でも楽しめる作品です。

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