全6巻のうちの3冊目、神の敵アーサーの上巻を読み終えました。
※前作「エクスカリバーの宝剣」の感想はこちら
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まだ上巻なので、簡単な感想にて。
相変わらず、めちゃめちゃ面白いぞこれ、、、
神の敵 アーサー
古い神々の世界を取り戻したいマーリンと、
サクソン人を追い出してブリタニアを統一し、平和な世界を築きたいアーサー。
アーサーにとって、古い神々の復活の重要度は低く、
次第にアーサーとマーリンの溝は深まります。
タイトルに「神の敵」とあるくらいなので、
今後、4巻目以降で、アーサーと古い神々との決別が描かれるのかもしれません。
もともと新しい神(=キリスト教)を嫌っていたはずの
グィネヴィア妃(アーサーの妻)ですが、
キリスト教の神父サンスムとの距離を近づけるなど、何やら不穏な動き
マーリン陣営であったモルガンも、次第にマーリンと離反する動きを見せ、
最強であったはずのマーリンの力が徐々に失われていきます。
上巻のラストではマーリンにとって、ショッキングなできごとが立て続けに、、、
本書のマーリンは言動も行動もなにもかもが全て利己的で、
デリカシーのかけらもない、本当にクズみたいなキャラクターです。
一方で、最強のドルイドとして何度も主人公のピンチを救う場面もあり、
クズなのに憎めないという、絶妙なバランス。
このまま終わらず、なんとか反撃する姿がみたいものです。
3巻は、1,2巻以上のワクワク感
本物の魔法が一切登場しないはずの本書ですが、
マーリン達が大釜(おそらく聖杯のことです)を探し求めるシーンでは、
魔法としか思えないような奇跡が何度も起こります。
あれは偶然なのでしょうか、それともマーリンのトリックなのでしょうか。
とにかく、読み手をハラハラさせつつ、
ここぞというところでマーリンの魔術が炸裂するという展開。
本当に読み手をワクワクさせるのがうまいです。
1,2巻目もおもしろいのですが、ワクワクする前に
固有名詞(キャラ、地名)を覚えるのに精いっぱいになってしまい、、、
3巻からはそれなりにキャラ同士の関係性もわかってきて、
物語にどっぷり、はまり込めます。
カイヌイン妃の決断
この3巻目で最も株をあげたのは、ポウイスの星、カイヌイン妃かな。
1巻目ではアーサーと結婚するも、アーサーが誓いを破ったがために破局。
2巻目では政局のために、望まない相手と結婚。
この人はずっと不幸せになる運命なのかな、、、と思いきや、
3巻では予想外の行動で度肝を抜きます。
私も読みながら、この展開にはびっくり。カイヌイン妃が大好きになりました。
マーリンの聖杯探索にも同行する強い心の持ち主。
幸せになってほしいけど、、、
本書はそもそも、アーサーの部下として仕えたダーヴェルが
アーサーとの思い出を回顧する形でつづられているのですが、
第3巻の冒頭で、老いたダーヴェルが死者の名前を挙げるシーンがあり、
その時点で本書に登場する主要キャラがほぼ生き残らないことが
明示されてしまっているのです。
(悲劇的な死を迎えるのか、老いて死ぬのかは不明)
もちろん、歴史的には最終的にブリテン島は
サクソン人によって支配される運命なので、
悲劇にならないはずはない、ことはわかっているのですが、
やはり悲しい。ぐすん。
ただ、死者の名前の中に、本書の重要人物、
アーサー王とモードレッドの名前がないのが気になります。
死ぬのが当然だからを名前を挙げるまでもない、ということなのか
あるいは何か意味があるのか。
微妙に気になるポイント。
なお、アーサー王伝説のなかでもよく知られたエピソード、
ランスロットとグィネヴィアの不義と、
トリスタンとイゾルデのエピソードは
まだ登場していません。
どのように描かれるのでしょうか。たのしみたのしみ。