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(読了)読書感想文/小説アーサー王の物語 エクスカリバーの宝剣(上/下)

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FGOに影響され(すぎて)アーサー王物語の小説版に手を出しました。
めっちゃおもしろいけど登場人物多すぎ地名多すぎ固有名詞多すぎ。

3部作で各1部が上下巻に分かれています。合計6巻にわたる大長編です。
第1部を読み終わったので感想を書きました。

 

なお残念ながらkindle版はありません、、、
こういう登場人物がめちゃくちゃ多い本ほど、kindleは力を発揮すると思います。
なんとか、、、電子化されたらいいなあ。

 

王道の歴史フィクション

 

本書を1行で紹介するなら、
戦いと政略と流血に満ちた、ブリタニアの歴史物語
でしょうか。

アーサーを中心とするブリタニア内での政略闘争と、
外からの危機(サクソン人の侵略)が、
緻密に(時に生々しく、凄惨に)描かれていて、引き込まれます。
作者のこだわりで史実に基づいた描写も多く含まれているのこと。

 

戦争に巻き込まれて、一般人は老若男女みんなまとめてバンバン死にます。
文化や芸術を愛する、美しい国が登場するのですが、
戦争によってボロクソに破壊されます。
生き残るのは強い国。
しんどい時代だ!


一般的に「アーサー王伝説」は魔法ありきで描かれることが多い気がするのですが
本作では「魔法」は登場せず、あくまでトリックとかおまじないとか、
そのような範疇で扱われています。

とはいっても、登場人物はみな呪いや呪術を信じており、
それらを操るドルイドや巫女は政治的にも非常に強い力を持っています。
ベースとなる土着の信仰(ケルト由来?)の描写もかなり細かくておもしろいです。

歴史上、やがてブリタニアはサクソン人に飲まれる運命にあります。
そのあたり、今後どのように描かれていくのでしょうか。

 

理解し難いアーサーのキャラクター


アーサーは義理人情に厚く、正義にもえる偉大な支配者として描かれます。


(ちょっと補足
:本書では幼いモードレッドがブリタニアの「王」なので、
アーサーは「アーサー王」ではなく、あくまで「アーサー」です。
一方でアーサーはモードレッドの後見人として指名されており、
つまり実質的な支配者でもあります。)

上巻でアーサー王が見方を助けにはせ参じる場面、
トリスタンに義を通すために、部下の一人と決闘する場面など、、、、
とにかくめちゃくちゃかっこいい!さすがアーサー!

と思いきや、後半部分では対立国との和平のための婚姻を反故にし、
周囲の反対を無視して、一目ぼれしたグィネヴィアと結婚、
ブリタニアは全面的な内戦状態に陥ります。

 

アーサーは、愚かなのか?賢いのか?理解しがたいシーンです、、、

 

とあるキャラが、「アーサーの魂は良心と野心の2頭の馬に牽かれた戦車」
と評するのですが、この説明が一番しっくりくるかもしれません。


義を持って平和的にブリタニアを治めようとする意志と、
ブリタニアを支配しようとする欲望のはざまで、アーサーの精神は揺れ動きます。

 

クズすぎるのにやたら強いマーリン

 

本作のマーリンは敵からも味方からも「偉大なドルイド」として畏怖されています。
ドルイドは強力な呪術を使う(と信じられている)ので、
誰もマーリンに攻撃しようとはしません。

 

ある意味最強です。チートです。
ここぞというピンチの場面でさっそうと現われて、味方の危機を救います。

一方で、、、

 

マーリンにはブリタニアを神々のもとに返すという野望?があります。
そのためには、すべての人間はマーリンにとって手段・道具でしかありません。
誰が死のうが、傷つこうが、愛人が強姦されようが知らん顔。

うん、クズだわこいつ。

なお「ブリタニアが神々の手に戻る」ために「大釜」が必要らしく、
マーリンは「大釜」を探し求めています。
後から気が付きましたが、この大釜=聖杯でしょうね。おそらく。

大釜は見つかるのでしょうか?マーリンの野望はどうなるのでしょうか?

終盤、マーリンの説得で敵軍の一部が、関ヶ原の石田軍よろしく裏切って
味方に加勢する場面がありますが、
どのように説得したか、詳細な描写は皆無です。
うーん、チートすぎる、、、

 

強い、かわいい、やばい、ニムエ

 

読み終えて調べるまで知らなかったのですが、
「ニムエ」ってアーサー王伝説ではかなり主要なキャラなんですね。

 

一般的には妖精や魔女として描かれ(「湖の乙女」と呼称されることも多い)
アーサー王エクスカリバーを授けたり、
ランスロットを養育したりする役回りとして描かれます

 

が、

 

本作のニムエはマーリンの愛人であり、

 

敵に目玉をえぐられ強姦され気が狂い

 

最恐の巫女として君臨します。

(本人曰く、敵に傷つけられたり強姦されたりする行為が
巫女として力を高めるのに必要だった、とかなんとか、、、
うーん意味不明。宗教怖い。)

 

味方キャラでありながら強烈な存在感を放つニムエ。
時に年頃の少女らしい愛らしい姿も見せつつ
時に呪いを振りまいて敵を恐怖のどん底に陥れます。

 

最終的には幸せになってほしいけど、、、
なんだか厳しい気がするw

 

個人的に本書で1番のお気に入りキャラです。

 

ここからどうなる?

第1部で、アーサーはなんとかブリタニア諸国を統一し、サクソン人との戦いに向け
態勢を整えます。
本来のアーサー王伝説であれば、トリスタンとイゾルデの物語とか、
ランスロットの不義とか、カムランの戦いとか、いろいろ有名エピソードが
登場するはずなのですが、、、

 

このあたりがどのように物語に組み込まれていくのか、楽しみです。