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(読了)読書感想文/舞踏会へ向かう三人の農夫(下巻)

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

・本小説の基本構造、あらすじ

 おおまかな本書の構造、あらすじ、背景についてはこちらの記事をどうぞ!

 

wan3ko5tan.hatenablog.com

 

ちなみに、Amazonではこのような「あらすじ」が書かれています

 

以下は上巻のAmazonページ

それは1914年のうららかな春、プロイセンで撮られた一枚の写真から時空を超えてはじまった―物語の愉しみ、思索の緻密さの絡み合い。20世紀全体を、アメリカ、戦争と死、陰謀と謎を描ききった、現代アメリカ文学における最重要作家、パワーズの驚異のデビュー作。

 

 以下は下巻のAmazonページ

文系的知識と理系的知識の融合、知と情の両立。百科全書的な知識で「人間とは何か」を描ききった衝撃のデビュー作!

 

読み終えてからAmazonの「あらすじ」を読むと、「ちょっと適当に書きすぎじゃない?」と思いますね。上巻はまだしも、下巻については

 

「人間とは何か」を描き切った

→「人間とは何か」というテーマではないような気がする

「文系的知識と理系的知識の融合」

→文系的/理系的という、区分け自体が意味不明

 

、、、これは本編読まずに書いてるな!笑

 

・小説としておもしろかったか?

 

うーん、うーん、うーん

 

読書ブログとして、書きづらいのですが、私はあまり楽しめませんでした。
途中、とある人物が記者にになるあたりは結構わくわくしたんですけどね。
物語としてはふんわり曖昧に終わってしまい、盛り上がれなかった、
というのが正直な感想です。

 

その前提で、以降の記事を読んでいただきますよう、お願いします。

 

・キーとなる「写真」をめぐる物語は、きちんと収束するのか?

 

表紙にも提示されてる、「舞踏会へ向かう三人の農夫」の写真を中心に、
時代、場所の異なる3か所で同時並行的にストーリーが展開されていきます。

 

写真はネガから何枚でも複製することができ
様々な物語が「複製」「編集」されていく、本書を象徴する存在でもあります。

 

写真が「特別な存在」→「一般的な存在」へと変化していく時代の中で、
本書では、「舞踏会へ向かう三人の農夫」が、いくつか複製され、
シミのようにストーリーのあちこちに登場します。

 

それらの写真をきっかけに、あるものは過去を想像し、あるものは人生を偽り、、、
現代と異なり、戸籍を偽る、身分を偽る、というのが、
生きていく手段としてわりと普遍的だった、20世紀初頭ならではの物語が
展開されていきます。

 

下巻では写真をめぐる物語の種明かしがされる、と思いきや、
同時に、さらに複雑に入り混じって、一体どれが本物のストーリーなのか
だんだんわからなくなっていきます。

いろいろな想像、ストーリーが、何が本物なのかわからないくらいまじりあって、
「みんなの考えた三人の農夫の人生」
そして
「みんなの(ありえたかもしれない/ありえなかったかもしれない)人生」
が提示されていきます。

 

何を言っているかわからんと思われると思います。申し訳ありません。
全部読んだ私にもよくわかっておりません。

 

冒頭に書いた「「写真」をめぐる物語は、きちんと収束するのか?」
という問いについては

答「収束しません」

が正しいかな。

 

 それゆえに「曖昧に終わってしまっておもしろくならなかった、、、」
という感想になってしまうのですが。

 

・小説と思って読むと面食らう

小説としてのパートとは別に、
筆者自身「歴史」「写真技術」「戦争」等に関する持論を展開するパートが
めちゃくちゃ長いので、読むとおどろきます。

 

残念ながら、これらの論説についてはほとんど理解できませんでした。
だって難しいんだもん、、、

 

逆に、これらについて、興味深く読み込める方にとっては、
めちゃくちゃおもしろいと感じるかもしれません。

 

・筆者の主張する写真についての考え方に、全て共感するわけではないけれど、、、

 

筆者の主張の一つとして、「写真を撮られる側」「撮られた写真を見る側」は相互に影響を及ぼしあう、というものがあります。
互いに互いの存在を想像することで、相手の人生や物語を想像し、やがて想像だけではなく人生にも影響を及ぼす、、、

 

個人的にこの主張については、いまいちぴんと来ませんでした。

 

私たちが写真を「観る」側であれば、確かに写真の被写体の人生を想像することもあるかもしれませんが、
写真を撮られる側になったときに、レンズの向こうがわにいる「自分の写真を観る、未来の何者か」の存在を想像することって、あまりないんじゃないかな、と。

 

とはいえ。

 

この小説の舞台、1914年は、写真を撮る/撮られるというのがまだまだ一般的でない時代。
「この写真が後世に残りますよ。あなたの姿を未来の誰かが眺めるんですよ」
といわれたら、確かにレンズの向こう側に、未来の何者かの存在を意識されずにはいられない、かも、とも思いました。

 

気軽にパシャパシャ、スマホで写真を撮って撮られて、という現代社会からは想像のできない、そんな情景をあったのかも、と考えると興味深いですね。

 

アウグスト・ザンダーの作品について

 

今回の読書をきっかけに、写真家アウグスト・ザンダーについていろいろ検索したのですが、作品が本当に魅力的で、これは実物を観てみたい、、、!となりまして。

www.google.com

 

写真集をAmazonで検索しましたが、中古品のみ出品されておりました。

 

2005年に東京国立近代美術館で、ザンダーをテーマにした企画展が行われていたりもしますので、そこまでマイナーではないはず、、、!(美術的には)

[https://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input[id]=20927:title]


いつか、実物を観られる日はくるのでしょうか、、、?