やっと読み終わった!!!
※全体的・総括的な感想となります。 過去ブログで内容についての細かい感想を書いてますので、読みたい方は下のほうのリンクをご参照くださいませ。
3行感想
・上巻(暗号の歴史)だけ、下巻(現代の暗号技術)だけ どちらかだけ読んでもよし。
・暗号には言語学、歴史、数学、戦争、コンピューター、、、人間の営みがすべて詰め込まれている。
・日本語訳に込められた情熱がすごい。翻訳者の愛に感動する。読めばわかる。
とにかく、上巻・下巻を両方読むのはボリューム的に大変なので、
〇暗号の基本的な仕組み・暗号に関する歴史(第二次世界大戦あたりまで)を読みたい方は上巻を
〇古代の言語の解読、および現代の情報社会を支える暗号について知りたい方は下巻を
読むのがおすすめです。とはいっても上巻を読むと絶対下巻読みたくなっちゃうと思いますが。
・暗号というのは、「相手を出し抜きたい」とか「自分を守りたいとか」人間の「欲」から生まれた技術なんでよね。こうやって書くと悪い感じしかしませんが、これって人間の営みそのものというか、本質部分だと思います。
暗号技術の説明も非常にわかりやすいんですが、何よりも暗号を生み出した人間の営みとか、感情的な部分をめちゃめちゃ魅力的に描いているのが本書の素晴らしいポイントだと思います。
・難解な暗号の仕組みを著者はとにかくかみ砕いてかみ砕いて、かなりわかりやすく書いてくれています。後書きによれば執筆に2年かかったようですが、むしろこのボリュームをどうやって2年で書き上げたのか、、、取材も含めれば相当な労力だったでしょう。
(なお、「わかりやすく」と書きましたが、それでもやっぱり難解です。特に最後のほうに登場する「量子暗号」のところは正直理解不能でした。著者は素粒子物理学の博士号をお持ちということで、素粒子物理学と量子力学がそもそも関連する分野なのかどうなのかよくわからんのですが、これらを理解したうえで執筆しているの、すごすぎです)
著者であるサイモン・シン氏は本を書くだけでは飽き足らず(?)、下巻巻末で読者向けに1万ドルの賞金をかけた暗号問題を出題しています。
下巻を読み切って「すばらしい内容だったなあ。残りは後書きかな~」とか思って読んでいたらむしろここからが本番だぜおまえら覚悟はいいか的な展開です。
問題は全部で10問、最後のほうはスパコンが必要(著者想定)になるレベルの問題。どういうことなの、、、
なおこの賞金問題は出版の翌年(2000年)にスウェーデンのチームが無事に解読しています。スーパーコンピューターではなくPC100台の並列計算で突破したとか。
・青木薫氏の翻訳もすばらしくて、著者の微妙なミス(ミスと呼ぶほどのものではないですが)、不足部分を訳注で丁寧に補ってくれています。そのうえ、最初に本が出版された1999年から、日本語版の文庫版が出る2007年の間で暗号技術の進歩により多少のラグが発生しているのですが、その部分もきちんとフォローしている徹底ぷり。
しかも、前述の賞金問題について、スウェーデンのチームがどのように解読したのか解説しようとするも、解読方法についての情報が公開されていない箇所もあったため、翻訳者自身も協力者を募って、賞金問題を解きなおしているのです、、、
つまり
素晴らしい本×献身的な翻訳 → やばい
本が出版されてからすでに20年以上経過しました。量子コンピューターも少しづつ開発が進められています。暗号をとりまく未来はどのようになるのか、この世の「情報」を一手に収めるのは誰なのか、そんなことを考えずにはいられない読書体験でした。
※以下は読書中の感想文のリンクです。